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2021年5月13日 (木)

採用に当たっての身元保証書について

Q 入社時に、身元保証人が必要とのことで身元保証書を記入するよう渡されました。内容を確認したところ、「本人の行為により生じたすべての責任を負う」と記載されており、身元保証期間についての記載はありません。このような内容の身元保証書は問題ないのでしょうか。


A 身元保証書は、労働者が使用者に損害を与えた場合に、第三者である身元保証人がその損害を賠償することを主な内容とするもので、使用者と身元保証人との間に身元保証契約が成立します。使用者が労働者に対して身元保証人を求めること自体に法的な制限はありませんが、身元保証人に求めることができる賠償の範囲・期間等については、「身元保証に関する法律」(以下「保証法」という)によって制限があります。身元保証書の記載内容に疑問があれば、提出前に使用者にその主旨を確認されることをお勧めします。


(1)身元保証契約の存続期間 身元保証契約の有効期間は、
・期間の定めのない場合は一般には3年(保証法第1条)
・期間の定めをした場合でも、最長5年(保証法第2条第1項)
・更新も可能だが、その期間は5年が限度(保証法第2条第2項)。
なお、「契約期間の満了時に異議がない時は更新する」という自動更新の規定があっても、無効となり、更新する際には、新たに契約を締結する必要があります。

(2)保証責任の賠償範囲

賠償の対象となるのは、被用者本人の直接、間接の労務に関連した行為により、使用者が受けた損害に限られる(保証法第1条)。
ただし、その損害額全てに対してではなく、
ア 使用者の監督過失の有無
イ 身元保証をするに至った事由
ウ 被用者の任務または身上の変化、その他一切の事情を斟酌し、裁判所がその賠償額を決定する(訴訟となった場合)(保証法第5条)。

つまり、保証人が賠償する額は、使用者の被った損害額そのものではなく、裁判所が合理的な額について定めることになります。

又、2020年4月の民法の改正により、身元保証契約の際に賠償額の上限を決めることが義務付けられました(民法第465条の2第2項)。
したがって、身元保証契約において、この上限額が定められていない身元保証契約は無効となります。

(3)使用者の通知義務(保証法第3条)

使用者は身元保証人に対し、次の通知義務があります。

ア 本人に業務上不適任または不誠実な事跡があって、そのため身元保証人に責任を生ずる

おそれがあることを知ったとき。

イ 本人の任務または任地を変更したことにより、身元保証人の責任が加重となり、または

その監督が困難となるとき。

(4)身元保証人の契約解除権(保証法第4条)

身元保証人は、上記(3)の通知を受けたとき、または自ら上記(3)の事実を知ったときは、身元保証契約を解除することができます。


flairポイント!

身元保証書に保証期間についての定めがなくても永久に保証責任があるわけではなく、その期間は3年とされますし、賠償責任の範囲についても、無制限に全額負担するものではありません。