労働相談Q&A(全) Feed

2025年1月14日 (火)

親に介護が必要となったら

Q 正社員として入社20年です。先日、同居の母が脳梗塞で入院しました。退院後は自宅に帰る予定ですが、身体の一部に麻痺があるため、しばらくの間介護が必要となりそうです。できれば仕事を続けたいのですが、いったん退職するしかないのでしょうか。


A 家族が介護状態になると、日常の中でやるべきことが更に増え、仕事を続けることへの不安が生じます。時には「介護離職」も考えてしまいますが、収入やキャリアが途切れることや、生活が介護一色となり精神的な負担が増加する等のリスクがあるので慎重に検討しましょう。会社には、仕事と介護の両立のための様々な支援制度が整えられています。まずは上司へ相談して、自分に合った両立支援制度を活用しましょう。また、地域の介護サービスを活用し、介護を一人で抱え込まないようにしましょう。


≪仕事と介護の両立のために≫

  1. 職場に「家族等の介護を行っている」ことを伝え、会社の両立支援制度の説明を受けましょう。制度活用の意向確認がされますので、必要とする制度の利用を申し出ましょう。
    (みなくる通信2024.11月号「介護制度の周知義務化とは?」参照)
  2. 介護保険サービスを積極的に利用し、「ひとりで介護をしすぎない」「自分の時間を確保する」ことを心掛けましょう。
  3. ケアマネージャーや地域包括支援センターなど、介護について気軽に相談できる窓口を持ちましょう。

≪仕事と介護の両立支援制度≫…どの制度を利用するにも労働者からの申し出が必要です!
仕事を辞めることなく、働きながら要介護状態の対象家族の介護等をするために、以下の制度が利用できます。勤務先に制度がない場合でも、法律に基づいて以下の制度が利用できます(所定労働時間短縮等の措置を除く)。

※配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母(配偶者の祖父母は対象外)、兄弟姉妹及び孫(兄弟姉妹の子、孫は対象外)のうち、要介護2以上であること、又は常時介護を必要とする家族

 ・介護休業・・・対象家族一人につき、通算93日まで3回を上限として、介護のための休業を分割して取得できます(雇用保険の被保険者が休業する場合は、介護休業給付金として休業開始時の賃金日額の67%相当分が支給される場合があります)。会社から賃金が支払われない場合、雇用保険料は発生しませんが、社会保険料は納付しなければなりません。

介護休暇・・・要介護状態にある対象家族の介護・世話をするための休暇を時間単位で取得できます。対象家族が1人の場合、年5日(原則:毎年4/1~翌3月末)まで、2人以上の場合、年に10日まで取得可能です(一般的に無給。会社によっては有給の場合があります)。

所定外労働の免除(残業免除)・・・所定労働時間を超える労働が免除されます。介護終了まで何回でも取得可能ですが、1回の取得単位は、1か月以上1年以内の期間での請求となります。

時間外労働の制限・・・介護が終了するまで、1か月24時間1年150時間を超える時間外労働を制限することを請求できます。

深夜業の制限・・・介護が終了するまで、午後10時から午前5時までの労働の制限を請求できます。

所定労働時間短縮等の措置・・・利用開始の日から3年以上の期間で、2回以上利用が可能な事業主が講じた措置のうち、短時間勤務フレックスタイム制度時差出勤介護費用の助成いずれかを利用できます。

・不利益取り扱いの禁止・・・介護休業などの制度の申し出や取得を理由とした解雇など不利衛な取り扱いが禁止されています。

・ハラスメント防止措置・・・上司・同僚からの介護休業等を理由とする嫌がらせ等と防止する措置を講じることが事業主に義務付けられています。

≪短時間勤務が利用できる場合の取得例≫

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会社が短時間勤務制度を措置し、それを利用した場合は、短縮された時間に相当する賃金は減額されるのが一般的です。短時間勤務制度を取得できる期間やその手続き、賃金等のルールは就業規則で定められているので、利用を希望する際は就業規則を確認しましょう。


flairポイント!

①会社の両立支援制度へ関心を持ち、介護を行う側の状況を把握するとともに、いざという時のために介護される側の希望を事前に確認しておきましょう。

②家族の介護は突然必要となるケースが多いため、もしもに備えて、職場内での情報の共有や業務のマニュアル化を進めましょう。

③入社1年未満の労働者と、週の所定労働日数が2日以下の労働者を労使協定により、両立支援制度の利用対象外としている場合があるので会社へ確認しましょう。

2024年11月28日 (木)

2025年4月からの介護制度の周知義務化とは?

Q 社員から介護の為に退職の相談をされた場合、会社としては勤務を継続してほしいのですが、制度や判断基準などの両立支援についてよく分かりません。面談などもどのように進めればいいでしょうか。


A 事業主は、仕事と介護の両立支援制度を十分活用できないまま介護離職に至ることを防止するため、仕事と介護の両立支援制度の個別周知と意向確認により効果的な周知を図るとともに、両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備を行わなければなりません。また、就業規則の整備も合わせてしておく必要があります。
面談では、申出をした労働者のおかれている状況を丁寧に聞き取り、どの制度を利用すれば退職を避けることができるのかを相談しましょう。


【 事業主側 】の義務とポイント

・事業主は介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、介護休業と介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるようにするため、以下の①~④いずれかの措置を講じなければならない義務があります。

  • 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
  • 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備 相談窓口の設置
  • 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
  • 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の取得促進に関する方針の周知

 

周知することがポイント

介護休業及び介護両立支援制度等を取得しやすい環境整備の措置として、
相談窓口や相談対応者を設置した場合も従業員へ周知しなければいけません。

 ~具体的な面談のポイント

・従業員から個別に家族の介護が必要だと相談や申し出があった場合、面談などを通じて利用できる制度を知らせることを義務化することとなっています。
周知事項と介護休業の取得・介護両立支援制度等の利用の意向確認を、個別に行わなければなりません。その際、取得・利用を控えさせるような個別周知と意向確認は認められません。

・会社の管理者や面談担当者は、研修を受講するなどの準備をしておくことで円滑に面談に対応できます。

  ☆相談面談での両立課題の共有
  ☆両立支援制度の説明、社内外の手続き等について必要書類の説明や、介護が必要となった場合に相談できる地域の窓口の周知(地域包括支援センターの案内) など
  ☆働き方の調整について
  ☆職場内の協力、理解の譲成
  ☆上司や人事による継続的な心身の状態の確認
  ☆社内の協力的なネットワークづくり

参照 育児・介護休業法改正ポイントのご案内
厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)

・介護に直面していない段階の従業員の場合でも、仕事と介護の両立支援制度を十分活用できないまま介護離職に至ることを防止するため、介護に直面する前の早い段階(40歳等)に介護休業および介護両立支援制度等に関する情報提供や、相談や申し出時に利用できる制度を従業員に知らせなければならないとされています。

※ 40歳になって介護保険に加入する際に、全従業員に介護休業などの支援制度を書面で知らせることを企業に義務付ける。とされています。
~2025(令和7)年度より施行「介護休業制度などの個別周知及び意向確認」の義務化より ~


【 労働者側 】の理解とポイント

介護休業とは、要介護状態になった家族を介護するため、労働者が利用できる休業制度
です。要介護状態とは、育児・介護休業法では、「負傷や疾病をはじめ、身体や精神上の障害で2週間以上の期間におよぶ常時介護が必要な状態」と定めています。

「要介護状態」とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態のことで、まだ要介護認定を受けていない段階でも、
介護休業の対象となります。この常時介護を必要とする状態については、判断基準が定められています。

介護休業の判断基準とは、常時介護を必要とする状態に関する判断の基準があります。

※介護休業は2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある対象家族を介護するための休業で、常時介護する状態については基準に従って判断されることになります。

(1)介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること。
(2)状態①~⑫のうち、2が2つ以上又は3が1つ上該当し、かつ、その状態が継続すると認められること。

 

項目  状態

    1

    2

    3

①    

座位保持(10分間一人で座っていることが出来る)

自分で可

支えてもらえばできる

できない

②    

歩行(立ち止まらず、座り込まずに5m程度歩くことができる)

つかまらないで
できる

何かにつかまればできる

できない

③    

移乗(ベットと車いす、車いすと便座の間を移るなどの乗り降りの動作

自分で可

一部介助、見守り等が必要

全面介助が必要

④    

水分・食事摂取

自分で可

一部介助、見守り等が必要

全面介助が必要

⑤    

排泄

自分で可

一部介助、見守り等が必要

全面介助が必要

⑥    

衣類の着脱

自分で可

一部介助、見守り等が必要

全面介助が必要

⑦    

意思の伝達

できる

ときどきできない

できない

⑧    

外出すると戻れない

ない

ときどきある

ほとんど毎回ある

⑨    

物を壊したり衣類を破くことがある

ない

ときどきある

ほとんど毎回ある

⑩    

周囲の者が何等かの対応を取らなければならないほどの物忘れがある

ない

ときどきある

ほとんど毎回ある

 

⑪    

薬の内服

自分で可

一部介助、見守り等が必要

全面介助が必要

⑫    

日常の意思決定

できる

本人に関する重要な意思決定はできない

 

参照 育児介護休業法のあらまし(厚生労働省)

会社は、介護休業の申出を受けた場合、労働者に申出に係る対象家族が要介護状態にあることを証明する書類の提出を求めることができるとされています。
証明書類は「医師の診断書」等に限定されておらず、提出可能な書類でよいとされています。


flairポイント!  

介護休業における「93日」は、自力で家族を介護するためだけの期間ではありません。介護は93日では足りず、年数のかかる場合が多いものです。仕事と介護を両立する為、今後の長期的な介護に関する方針を決めるまでの間、当面、家族による介護がやむを得ない期間について、緊急的対応措置として、休業ができるようにすることが必要であるという観点から創設されています。 労働者が家族の介護をひとりで抱えずに、職場、福祉、地域の活用などを含め、必要な支援チームで乗り越えるための方法を検討・準備する期間と考え「介護休業」を有効活用していきましょう。

                     

2024年10月 3日 (木)

災害時の時間外労働等について

Q 災害が発生すると、行政などから早期復旧のための支援協力要請が会社にあります。この場合、時間外・休日労働などで気をつけることはあるのでしょうか。


A  ライフラインの早期復旧のような人命・公益の保護を目的とする場合、事業主は36協定で定める限度時間とは別に、時間外・休日労働を行わせることができます。「災害その他避けることができない事由によって、臨時の必要がある場合」労働基準監督署長の許可を受ければ(事後、遅滞なく届出も可)、労働基準法第33条第1項において必要な範囲内に限り、時間外・休日労働が認められています。
ただ、労働基準法第33条には労働時間の上限規制は定められておらず、“必要な限度の範囲内に限り認められる”とされているので、長時間労働となりがちです。労働者の健康被害の防止のために労働時間を把握した上で、出来る限り月45時間以内に収めるよう努め、状況に応じて、医師の面接指導などを行いましょう。


【原則】

労働時間・休日の原則及び時間外・休日労働の上限

1.【労働時間、休日の原則】 (労働基準法第 32 条、第 35 条)

  労働時間の限度は、原則、1日8時間、1週40時間 です。
  また、少なくとも1週間に1日または4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。

2.【時間外・休日労働の上限】 (労働基準法第 36 条)

  法定労働時間を超えて時間外労働させる場合や法定休日に労働させる場合には、あらかじめ労使で                      「36協定」を結び所轄労働基準監督署に届け出る必要があります 。
 *月45時間以内 年間 360時間以内 (休日は含まない)

臨時的な特別の事情で労使が合意(特別条項)にはこの上限を超えることができますが、その場合でも

時間外労働(休日労働は含まず)   年720時間以内
*時間外労働+休日労働        月100時間未満 ・ 2~6カ月平均80時間以内
*時間外労働が45時間を超える月   年6カ月が限度

【例外規定】

災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等について(労働基準法第33条第1項)

災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合には、事業主は、上の1及び2の労働時間を延長して、または法定休日に労働させることができます。その場合、労働基準監督署⾧の許可が必要ですが、事態急迫のために許可を受ける暇 がない場合においては、事後に遅滞なく届け出を行う必要があります。

この場合、2の上限規制にかかわらず、必要な範囲内に限り、時間外、休日労働をさせることも可能となります。

【災害その他避けることのできない事由とは(許可基準)】

①単なる業務の繁忙その他これに準ずる経営上の必要は認められません。
②地震・津波・風水害・雪害・爆発・火災時等の災害への対応(差し迫った恐れがある場合における事前の対応を含む。)、急病への対応その他の人命又は公益を保護するための必要は認められます例えば、災害その他避けることのできない事由により被害を受けた電気、ガス、水道等のライフラインや安全な道路交通の早期復旧のための対応、大規模なリコール対応は含まれます。
③事業の運営を不可能とさせるような突発的な機械・設備の故障の修理、保安やシステム障害の復旧は認められますが、通常予見される部分的な修理、定期的な保安は認められません。例えば、サーバーへの攻撃によるシステムダウンへの対応は含まれます。
④上記及び③の基準については、他の事業場からの協力要請に応じる場合においても、人命又は公益の確保のために協力要請に応じる場合や協力要請に応じないことで事業運営が不可能となる場合には、認められます。

※上記の許可基準はあくまで例示であり、限定列挙ではありません。


災害の際、多くの企業は普段の業務と大幅に異なる対応を求められます。労働時間を延長したり、休日労働等、復旧対応や保守等の業務にあたったりしなければならない企業もでてきます。

災害等による臨時の必要がある場合の時間外・休日労働(労基法第33条)は、あくまでも必要な限度の範囲内に限り認められ、過重労働による健康障害を防止することが重要です。事業主は、やむを得ず長期に時間外労働や休日労働をさせた労働者には、医師の面接指導等を実施し、健康被害を防ぐための労務管理を徹底しましょう。

参考  過重労働による健康障害を防ぐために  
        厚生労働省 労働基準法第33条(災害時の時間外労働等)について抜粋


flairポイント!

★ 災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等(労基法第33条)は、必要な範囲内に限って認められるので、労働時間を把握し、労働者の健康管理を行いましょう。

★ 割り増し賃金は必ず支払いましょう。
  (割増率は、時間外労働25%以上・60時間超は50%以上、休日労働35%以上)

2024年8月23日 (金)

日によって所定労働時間数が異なる場合の時間単位の年次有給休暇について

Q 私は、週3日間(月・水・金)は6時間、週2日間(火・木)は4時間の労働契約で週5日パート勤務をしています。私のような働き方でも半日や時間単位の有給休暇は取得できるのでしょうか。また、時間単位の年次有給休暇を取得する場合は、年間何時間取得できるのでしょうか。


A 年次有給休暇は日単位で取得することが原則ですが、労働者が希望し、使用者が同意した場合であれば、半日単位の取得も可能です。また、労使協定が締結されている会社であれば、年に5日を限度として時間単位の年次有給休暇が取得できます。

日によって所定労働時間が異なる場合の1日分の労働時間数は、1年間(または決められている期間)における1日平均所定労働時間数に基づいて定めることになります。

 ①1日の所定労働時間は以下のとおりです。
 (6時間×3日+4時間×2日)÷5日=5時間12分→1時間未満を切り上げ1日6時間とする。

 ②時間単位の年次有給休暇としての総時間数
  6時間×5日=30時間分の時間単位年休

 時間単位の年次有給休暇は、30時間となりますが、労使協定の有無を確認しましょう。


 年次有給休暇は、要件を満たした労働者に付与される法律で認められた休暇で、所定労働日に賃金をもらいながら休むことができます(労働基準法第39条)。

 日単位での取得が原則ですが、労働者が希望し、使用者が同意した場合であれば、日単位取得の阻害とならない範囲で、半日単位の取得が可能です(労使協定不要)。また、年次有給休暇を有効に活用できるようにすることを目的として、労使協定が締結されれば、労働者は年に5日を限度として時間を単位とする年次有給休暇が取得できます。前年度から繰り越した年次有給休暇がある場合、その繰り越し分も含めて5日分以内の取得とされ、分単位などの時間未満の単位は認められません

 年次有給休暇は、原則、労働者が請求する時季に与えなければなりませんが、請求された時季に休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、使用者は他の時季に与えることができます。また、事業の正常な運営との調整を図る観点から、労使協定で一部の労働者を時間単位年休の対象外とすることができ、対象外の労働者に該当すると時間単位年休は取得できません。

まずは、労使協定の有無と対象労働者の範囲を確認することが必要です。

 

年次有給休暇の時間単位付与のための労使協定に規定する内容

①  時間単位年休の対象労働者の範囲
②  時間単位年休の日数(前年度からの繰り越しを含めて5日以内)
③  時間単位年休1日の時間数(1日分の平均所定労働時間数を基に定める。時間に満たない端数は時間単位に切り上げ)
④  1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数(2時間、3時間など。ただし、1日の所定労働時間を上回ることはできない)

なお、時間単位年休を取得した場合の賃金額は、日単位による取得の場合の計算と同様とされ、就業規則に定められているので確認しましょう。

2024年7月16日 (火)

グレーゾーンを放置しないハラスメント防止の取り組み(その3)

Q 社内でハラスメントの相談担当を行っています。複数の従業員から、「特定の管理者からパワハラを受けた」との苦情が寄せられ調査をしましたが、パワハラとは認定されませんでした。しかし、この問題に対して、会社として何もしなくてもいいのでしょうか?


A 管理職の言動が「ハラスメント」と認定されなかったとしても、その行為は、同じ職場で働く労働者の能力発揮に重大な影響を与える可能性が高いと思われます。就業環境を害するおそれがある言動については、職場全体でハラスメント防止の意識を高め、防止のための取り組みを積極的に行っていくことが大切です。


 パワハラ防止指針では、相談者と行為者への個々の対応にあわせて、職場全体に向けたハラスメントの再発防止措置を講じることが求められています。
   ハラスメントを防止するための取り組みとしては、以下のことが考えられます。

 

  (1) ハラスメント防止規定を作成し、事業主が従業員へメッセージを発信する

就業規則や服務規律の中にハラスメント防止規定を作成し、事業主が「ハラスメントを行ってはならない旨の方針および職場におけるハラスメントを行ったものに厳正に対処する旨の方針」を明確に表明しましょう。トップが方針を表明することによって、従業員が安心して働くことができ、社内の相談窓口も利用しやすくなります。また、行為者に対しても、規定にそって処分されるかもしれないという心理的な抑止力にもなります。

トップの方針表明の場としては、従業員へ向けた挨拶の時(朝礼、年末年始の会、月例会、事業報告会、社内研修会等)に伝えるのが望ましいが、社内報やパンフレット、ホームページなどの広報や啓発のための資料などに掲載したり、配布したりすることも効果があります。

 

(2)実態を把握する

アンケート等を実施することで、従業員のSOSの声を上げやすくする取り組みもよいでしょう。アンケートは無記名で実施するのが効果的です。自分自身が被害にあっている場合もあれば、周りの同僚が被害にあっていることもあります。早期に情報をキャッチすることで、被害を最小限に食い止めることができます。

 

(3)教育研修の実施

従業員に対して、ハラスメントに関する研修、講習などを計画的に実施しましょう。

対象としては、管理者や一般職、非正規労働者も含めて実施しましょう。

内容としては、ハラスメントの基礎知識(パワハラ・セクハラ・マタハラ等)の座学や、コミュニケーション研修(アサーション、アンガーマネジメント等)など実践的な内容もよいです。また、グループワークなどを取り入れた内容の研修は、人との価値観の違いを再認識することができたり、自分の言動を振り返ることができたりし、相手への気遣いや思いやりなど人権意識を高めることが期待できます。

 

(4)相談窓口の周知・啓発

 ハラスメントの相談窓口を社内に限定せず、社外の人事労務やカウンセラーなどの専門家に依頼して設置することも可能です。相談する従業員からみれば、選択肢が多い方が事情に応じて選択できるというメリットがあります。

いずれにしても、ハラスメントの相談窓口を気軽に利用してもらえるよう、ポスターやカード、社内イントラを活用して従業員へ周知しましょう。

相談方法も電話・窓口だけでなく、メールやチャット等でも利用できるよう工夫してみましょう。

 

(5)日頃の声掛けの中で予防活動

ハラスメントの被害を受けている人は、元気がなかったり口数が少なくなったりと、職場で孤立しがちです。相談窓口に相談をする勇気が持てない人も多いです。相談担当者は、窓口で相談を待つだけではなく、自ら声をかけていくことも時には必要です。日頃の何気ない挨拶や会話をきっかけに、困りごとの相談がスタートすることもあります。

「パワハラと認定されないので大丈夫!」ではなく、ハラスメントの芽を早めに摘んでおくことが大切です。相談窓口担当者が積極的に働きかけることで、未然にハラスメントを防止することができたり、被害を最小限に留めたりすることができます。

 

(6)相談窓口担当者のケアも大切に

職場における人間関係の調整は、精神的にも身体的にもストレスの負荷がかかり、ハラスメント相談担当者自身もメンタルダウンするリスクはあります。担当者だけがひとり抱え込んで頑張るのではなく、職場の人事・総務・安全衛生の担当者と連携しながら、出来るところから取り組んでいきましょう。場合によっては、外部のスーパーパイザーやカウンセリングが利用できる体制整備も必要です。

行政の利用できるサービスや相談窓口もありますので、積極的に活用されることをお勧めします。 


厚生労働省ポータルサイト

ハラスメント対策「あかるい職場応援団」

働く人のメンタルヘルス「こころの耳」

 

2024年6月14日 (金)

パワハラ認定における懲戒処分(その2)

Q 中小企業の社長をしています。先日、社内のハラスメント相談担当者より、パワハラ事案がありその調査結果の報告を受けました。報告内容を聞くと、パワハラ行為者への懲戒処分を検討しなければならないと感じているのですが、気を付けておくことはありますか?


A  パワハラ行為者への懲戒処分をするときには、就業規則に懲戒の種類、懲戒の事由が定められ、従業員に周知されていなければなりません。処分内容についても、事案の内容と比較して重すぎる懲戒処分は無効となる可能性があります。懲戒処分には、客観的に合理的な理由と社会通念上相当であることが求められるので、慎重に判断しましょう。


【ハラスメント対策委員会の設置と事実確認】

パワハラの認定においては事業主のみで判断せず、人事部長や労働者代表(労働組合役員等)、外部の専門家(顧問弁護士や顧問社労士)などのメンバーで構成された委員会(ハラスメント対策委員会)を設置して、ここが中心となって判断していくことが望ましいです。

ハラスメント対策委員会は、パワハラ事案の報告書をもとに、相談者・行為者双方から再度事実関係を確認します。処分に先立ち、パワハラ行為者に弁明の機会を与えることも必要です。

●パワハラと認定できなかった場合
ハラスメント対策委員会でパワハラと認定できなかった場合、相談者・行為者に報告することとなります。その時、相談者から再調査を求められた場合、相談者の納得できない気持ちを傾聴しつつも、新たな事実が出てきた場合のみ対応し、会社としては適正な対処を行った上での調査結果や判断であることを伝えましょう。

【パワハラと認定された場合】
パワハラと認定されたら、そのパワハラ行為が懲戒に値する内容かどうかを検討します。
懲戒処分の判断に際しては、下記の「考慮すべき要素」を参考にしてください。重すぎる懲戒処分は無効となるので、注意してください(労働契約法第15条)。

<パワハラの行為者に対する懲戒処分にあたり、考慮すべき要素>

・パワハラ行為の内容、頻度や期間、常習性
・パワハラ行為についての他の相談者の数
・パワハラによる相談者の被害の程度(相談者が退職に追い込まれているかどうか、精神疾患にり患するなど、健康上の問題が生じているかどうか)
・行為後の謝罪や反省の有無(パワハラではないと否定したり、開き直っているのか否か)
・行為者の過去の懲戒処分歴の有無
・職責、管理職が行為者なのかどうか   など

 パワハラは悪質ないじめ行為等の場合もありますが、熱心に指導をした内容が行き過ぎてしまったという場合もあります。パワハラ自体は許されない行為ですが、その処分にあたっては、懲戒処分として処罰をするのが適切か否かも含めて検討が必要でしょう。

(例)行き過ぎた発言があり最終的にパワハラと評価される行為をした社員が、真摯に反省している場合などにおいて、安易に懲戒処分を選択したことで、会社への貢献意欲等を喪失し、貴重な人材を失うということもあります。

 懲戒処分に値する行為が行われた場合であったとしても、懲戒処分ではなく厳重注意処分(次回同種の問題を起こせば厳しい懲戒処分を行う旨の警告付き)程度にとどめ、改善の機会を付与するという場合もあります。
 しかし、一方で行為者の反省の意思がなく繰り返しパワハラ行為等を行う悪質な従業員の場合は、放置しておくこと自体が極めて問題であり、被害が深刻化しますので、懲戒処分をすることも許容されます。

懲戒処分の種類は、「戒告・けん責・訓戒」「減給」「出勤停止」「降格処分」「諭旨解雇」「懲戒解雇」など、会社によって様々です。

 

【懲戒処分を決定したら】
 会社によってパワハラの再発防止を目的として、懲戒処分を公表する場合があります。ただし、公表するか否かは、行為者だけでなく、パワハラ被害者のプライバシーを保護する観点からも慎重な判断が求められます。

行為者へは、懲戒処分の内容を伝えるとともに、行為者の言動がなぜハラスメントに該当し、どのような問題があるのかを真に理解させることが大切です。

相談者(被害者)へは、行為者との関係改善に向けた援助や、行為者と引き離すための配置転換、また行為者から謝罪させる、などの配慮措置が求められます。その時、相談者(被害者)の意思を尊重するように心がけましょう。また、相談者の労働条件上の不利益の回復やメンタル不調があれば、管理監督者や産業保健スタッフと連携を取りながら対応しましょう。

 懲戒処分については、弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談しながら、慎重に対応されることをお勧めします。

ハラスメント相談窓口担当者の役割(その1)

Q 職場のハラスメント相談窓口担当者に任命されました。先日、パワハラを受けているという内容のメールが届き、今度対面でお話を聞くこととなりました。相談対応をするときの注意点や気を付けておくことを教えてください。


まず、社内の就業規則やハラスメント防止規定を確認し、相談窓口担当者の役割がどこまでなのか事前に把握しておきましょう。話を聞く時は、公平・中立を意識しながら、相手の話を最後までしっかり聞きましょう。


全ての事業主には、職場におけるハラスメント防止措置が義務化されており、パワハラ等の相談に適切に対応するために必要な体制の整備を行わなければなりません。

ハラスメントの相談体制は各職場で異なるので、就業規則や服務規律(ハラスメント防止規定)などで事前に確認しておきましょう。また、ハラスメントの相談から懲戒処分までの流れやハラスメント相談担当者の果たすべき役割の範囲も確認しておきましょう。


【相談対応する前の注意点】

  1. 事実関係を正確に把握するためにも、行為者・相談者・関係者への聞き取りは2名で対応し、聞き手担当、記録担当と役割分担しておくとよいでしょう。また、当事者や関係者と利害関係のない担当者を選任することが望ましいです。
  2. 双方の話を聞く時は、どちらかに肩入れしすぎないよう公平・中立に話を聞くよう心がけましょう。先入観をできるだけ持たないようにしましょう。
  3. 相談者に対して、「ハラスメント相談担当者には守秘義務が課せられていること」、「相談したことを理由に不利益な取扱しないこと」「プライバシーは保護されること」を十分説明し、安心して話せる環境を作りましょう。
  4. 相談者および行為者・第三者には、調査にあたって、聞き取りを受けたことやその内容について口外しないことを約束させましょう。また行為者に対して、報復行為は禁止であることを強調しておきましょう。

 

【相談内容を聞く時の留意点】
 パワハラの相談があった場合、会社はパワハラの有無を調査し、事実関係を正確に把握することが大切です。

<相談者への聞き取り>
(1)  最初の聞き取りでは「指導」や「判断」をすることはせず、相談者の言い分に耳を傾け(傾聴)、気になる点があったとしても、反論したり、話を遮ったりせずに、最後まで話を聴きましょう。

(2) 相談を聞く時は、具体的な事実確認に徹して話を聞きましょう。「いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように」など、問題となった発言や行為、その言動に至る経緯、行為者と相談者の関係などについても詳細に調査しましょう。

(3) 相談者の心身の状態を把握しましょう。傷害を負っていないか、精神的にまいっていないかどうか(睡眠や食欲、体調の変化等)を確認しましょう。場合によっては医療機関の受診や産業医へつなぎましょう。

(4) 相談者が何を望んでいるのか確認しておきましょう(ただ聞いてほしいだけなのか、懲戒処分をしてほしいのか、配置転換を希望するのか、等)。

<行為者・第三者への聞き取り>
(5) 行為者および第三者への聞き取りについては、相談者の了解を得てから行いましょう。相談者の了解が得られない場合は、行為者等への聞き取りは原則できません。しかし、放置しておくと職場環境に重大な影響を与えかねない場合や相談者が不利益を被る恐れがある場合は、行為者・第三者への聞き取りの必要性について、相談者に十分理解してもらうよう話し合いましょう。

(6) 相談者の主張が必ずしも事実とは限りません。行為者への聞き取りの際は、あくまでも中立的な立場であることを意識して、先入観を持たないよう、話を聞くことが大切です。

(7) パワハラの対象となる行為を行為者が認めている場合は、その内容を記録しておきましょう。逆に行為者が対象行為を認めていない場合は、相談者や第三者から再度聞き取りを行いましょう。

 
 相談者・行為者・第三者の言い分を照らし合わせ、双方の言い分に食い違いがある場合は、客観的な証拠や目撃者等の第三者の証言に照らして、どちらの言い分が信ぴょう性が高いのかを判断しましょう。話の内容に一貫性があるか、矛盾がないかなども判断の要素となります。

 

【聞き取り後の対応 ~担当者の役割の範囲~】

 パワハラの事実関係の聞き取りが終わると、パワハラの有無について判断することになりますが、ハラスメント相談担当者の役割が、聞き取りまでなのか、パワハラの判断や処分にまで関与するのか、企業や担当者の職責によって異なりますので、再度確認しておきましょう。

 
企業によっては、ハラスメント相談担当者の役割を内容の聞き取りと取りまとめまでとし、社内で構成した専門委員会(例:ハラスメント対策委員会等)が、報告内容に応じてパワハラの認定や処分を行うという役割分担をしている場合があります。


【相談者(被害者)に対する配慮措置の実施】
 パワハラの相談があった場合(最終的な調査結果を待たずとも)、速やかに相談者(被害者)に対する配慮措置を行うことが求められます。相談者と行為者との関係改善に向けた援助や、行為者と引き離すための配置転換、また行為者から謝罪させる、などの対応が考えられますが、相談者(被害者)の意思を尊重するように心がけましょう。


【再発防止に向けた措置】
 パワハラ防止指針では、相談者と行為者への個々の対応にあわせて、職場全体に向けたハラスメントの再発防止措置を講じることが求められています。
 ハラスメントがあったのか、又はハラスメントに該当するのか否かの認定や事実確認も重要ですが、問題となっている言動が改善され、良好な職場環境を回復するためにはどうしたらよいのかも同時に考え、行動することが大切です。

参考フロー図
企業によって相談体制は異なるので、あらかじめハラスメント相談窓口担当者に任せる職務の範囲を明確にしておきましょう。

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(参考)厚生労働省:「職場における、パワーハラスメント対策、セクシュアルハラスメント対策、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です!」(令和4年11月作成)より抜粋【相談・苦情への対応の流れの例】


関連ページ 職場でのいじめ・パワーハラスメント

2024年4月11日 (木)

事業開始後に廃業しても基本手当(失業給付)を 受けられる特例

Q 事業縮小で会社から整理解雇されました。退職後自分で事業を始めようと思っていますが、事業がうまくいかなかった時のことが心配です。そうなると失業給付はどうなるでしょうか。


A 雇用保険の基本手当(失業給付)は、失業中の生活を安定させるために支給されるもので、求職活動をしている場合に給付されます。したがって、退職後求職活動をしないですぐに起業した場合は受給することができません。しかし、受給資格のある人が受給期間特例の手続きをすることで、最長4年間受給期間を延長することが出来ます。仮に事業が上手く行かず廃業したとしても、基本手当の受給期間が残っていれば、再び基本手当を受給することが可能となりますので、期限までに受給期間延長の手続きをしておくことをお勧めします。


雇用保険の基本手当の受給期間は、原則離職日の翌日から1年以内となっています。しかし、受給期間の特例により、事業を開始等した方が事業を行っている期間等の最長3年間(本来の受給期間1年間と合わせて合計最長4年間)受給期間に算入しないことが出来るので、仮に事業を休廃業しても延長した受給期間中の求職活動であれば基本手当が受けられます。

 離職日の翌日以後に下記の要件を全て満たす事業を開始等した場合は、受給期間の特例を申請できます。

 ① 事業の実施期間が30日以上であること。
 ② 「事業を開始した日」「事業に専念し始めた日」「事業の準備に専念し始めた日」のいずれかから起算して30日を経過する日が受給期間の末日以前であること。
 ③ 当該事業について、就業手当または再就職手当の支給を受けていないこと。(受給開始後に起業し、就業手当または再就職手当をもらってしまうと手続きは出来ませんが、就業手当または再就職手当が不支給だった場合には延長申請ができます。)
 ④ 当該事業により自立することができないと認められる事業ではないこと。
  ※次のいずれかの場合は、④に該当します。
  ・雇用保険被保険者資格を取得する者を雇い入れ、雇用保険適用事業の事業主となること。
  ・登記事項証明書、開業届の写し、事業許可証等の客観的資料で、事業の開始、事業内容と事業所の実在が確認できること。
 ⑤ 離職日の翌日以後に開始した事業であること。
 ※離職日以前に当該事業を開始し、離職日の翌日以後に当該事業に専念する場合を含みます。

 
受給期間延長の特例の申請手続きは、事業開始日の翌日から2か月以内に受給期間延長等申請書を開業届等の必要書類とともにハローワークに提出する必要があります。まずはハローワークに確認して、万が一のリスクに備えて手続きをしておいてはいかがでしょうか。

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2024年2月28日 (水)

短期アルバイトの社会保険加入

Q 1カ月の短期アルバイトをすることになり労働条件通知書を貰ったら、雇用保険だけではなく社会保険にも加入と記載されていました。2カ月以内の契約であれば、社会保険に加入しなくても良いはずですがどうなのでしょうか。その場合、社会保険料はいくら引かれるのでしょうか。


A 令和4年10月以降は、雇用期間が2カ月以内であっても要件に該当すれば社会保険に加入するようになりました。


以前は雇用期間が2カ月以内であれば社会保険の適用除外でしたが、令和4年10月以降は当初の雇用期間が2カ月以内であっても以下のいずれかに該当する方は雇用期間の当初から社会保険の加入となります。

①就業規則、雇用契約書等において、その契約が「更新される旨」または「更新される場合がある旨」が明示されている場合
②同一事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されているものが、更新等により最初の雇用契約の期間を超えて雇用された実績がある場合

労働条件通知書の契約期間欄を確認し、「自動的に更新する」「更新する場合があり得る」にチェックがある場合は雇用期間の当初から加入となります。ご相談者の場合、1カ月の雇用ですが労働条件通知書に「社会保険加入」と記載されているのであればこの要件に該当している可能性がありますので、再度労働条件通知書を確認してみてください。

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仮に「契約の更新はしない」にチェックがついていれば、1カ月のみの契約なので社会保険加入は出来ませんが、所定の期間を超え引き続き使用されるに至った場合は、その日から加入となります。

社会保険に加入することにより、健康保険料、介護保険料(40~64歳)、厚生年金保険料が発生します。毎月の給与額(通勤手当などの各種手当を含む)を区切りのよい幅で区分した標準報酬月額をもとに保険料を決定します。

例)鳥取県在住(年齢40歳) 
基本給88,000円、通勤手当2,000円 合計90,000円⇒保険料額表により標準報酬月額は88,000円になります。

社会保険

料率

社会保険料 (円)

労働者負担分 (円)

健康保険料率

9.68%

8,518.4

4,259.2

介護保険料率

1.6%

1,408

704

厚生年金保険料率

18.300%

16,104

8,052

29.58

26,030.4

13,015.2

※保険料率は、令和6年3月分(4月から9月納付分)からのものです。


社会保険に加入すると、保険料負担が発生しますが将来もらえる年金額が増えるという大きなメリットがあります。

参考)年金額シミュレーション(厚生労働省 社会保険適用拡大ガイドブックより)
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他にも年金や医療保険の面で今より手厚い保障を受けられるメリットがあります。

社会保険に加入するメリットや短時間労働者の社会保険加入要件などについてはこちらのページを参考にして下さい。
パートの社会保険加入の拡大

パートの社会保険加入の拡大

Q 私はパートで週20時間働いており、雇用保険には入っていましたが、社会保険(厚生年金と健康保険)には加入していませんでした。先日会社から、社会保険に入るよう言われましたが、主人の扶養の範囲内で働きたいのですが入らないといけないのでしょうか?


A 社会保険の被保険者の要件が拡大され、その要件を満たす労働者は加入しなければなりません。どのような働き方をすればいいのか、家族でよく考えて労働契約を結びましょう。


原則は、勤務時間・勤務日数が常勤雇用者の4分の3以上働く方が社会保険(厚生年金保険と健康保険)の加入対象ですが、従業員101人以上の企業又は100人以下の企業でも労使合意に基づき、下記の要件を満たす方にも対象が拡大されました(2024年10月からは51人以上の企業が対象)。

 
【短時間労働者(4分の3未満)加入要件】
以下の項目すべてに該当する方は、加入することになります。

① 週の所定労働時間が20時間以上であること(残業時間は含めない)
② 雇用期間が2か月以上見込まれること(更新の可能性がある方を含む)
③ 所定内賃金の月額が88,000円以上であること(通勤手当、残業代、賞与などは含めない)不明な場合は「時間給×1週間あたりの所定労働時間×52週÷12か月」で計算
④ 学生でないこと(ただし夜間、定時制の方は対象)
⑤ 従業員数(社会保険の対象となっている従業員数)が常時101人以上の企業又は100以下の場合は労使で合意が出来ていること。
⑥ 現在75歳未満であること(厚生年金は70歳未満の方)

【社会保険に加入するメリット
 ・将来もらえる年金が増える
 ・障害がある状態になった場合などに障害年金がもらえる
 ・私傷病や出産で休んでも、傷病手当金や出産手当金がもらえる
 ・会社も労働者とほぼ同額の保険料を負担する

社会保険に加入すると、保険料の負担が増えますが、これまでより手厚い保障を受けることができます。

【その他気をつけるポイント】

〇 年収130万円未満であっても、上の加入要件に当てはまる方は、社会保険の被扶養者とはならず、自身で社会保険に加入することになります。
〇 配偶者が勤務する会社から支給される扶養手当(家族手当等)の支給要件については、各会社によって違いますので、その会社にお問い合わせください。

社会保険の適用関係図5_2


【被保険者の取扱いに係る留意事項】

短時間労働者(4分の3未満)の標準報酬月額の算定に係る支払基礎日数の取扱い

短時間労働者の算定基礎届・月額変更届等における支払基礎日数は、
各月11日以上の勤務日数があるかどうかで判断します。

【もし新たに社会保険に加入する場合】

〇 厚生年金保険と健康保険の加入手続きは勤め先の会社が行いますが、現在、配偶者の健康保険の被扶養者の方は、資格喪失届を配偶者の会社を通じて行う必要がありますので、その旨を配偶者の会社に申し出て下さい。
〇 現在、国民健康保険に加入している方は、国民健康保険の資格喪失の届出を自分で行う必要があります。詳しくはお住まいの市町村にお尋ねください。


なお、この社会保険の加入基準を守らない事業主には、懲役刑または罰金刑とする罰則規定が適用されますのでご注意ください。