労働相談Q&A(全) Feed

2025年5月23日 (金)

自己都合退職時における失業給付の給付制限期間の見直し(1ヶ月へ)

Q 2025年(令和7年)4月以降に、自己都合で退職した場合、雇用保険の失業給付の待期期間が1か月に短縮されると聞きましたが、どういうことでしょうか?


A 2025年(令和7年)4月以降に自己都合退職した場合、失業給付の給付制限期間は「2カ月」から「1カ月」に短縮されました。ただし、退職日から遡って5年間のうちに2回以上正当な理由なく自己都合退職し受給資格決定を受けた場合は、給付制限が3か月となります。

また、離職前1年以内に教育訓練等を受講した場合は、給付制限が解除され、待期期間後すぐに失業給付を受給することができるようになりました。


失業した人が安定した生活を送りながら、一日も早く再就職するために支給される雇用保険の失業給付は、7日間の待期期間の後、これまで自己都合で退職した場合は2か月間の給付制限がありましたが、2025年4月1日からは1か月間に短縮されました。

ただし、退職日から遡って5年間のうちに2回以上正当な理由なく自己都合で退職をした人は、待期期間とその後の3か月間、失業給付が支給されないというルールは、これまでどおりです。また、自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇(重責解雇)された場合も、給付制限は今までどおり3か月間です。

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なお、2025年4月以降は、リ・スキリング(=学び直し)のために教育訓練等(※)を受けた(受けている)場合、給付制限が解除され、7日間の待機期間後直ちに失業給付を受け取れるようになりました(2025年4月1日以降に受講を開始したものに限る)。

 
(※)給付制限が解除される教育訓練等

① 教育訓練給付金の対象となる教育訓練 

教育訓練給付制度 検索システム|厚生労働省
② 公共職業訓練

 ハローワークに相談

③ 短期訓練受講費の対象となる教育訓練 
  ④ ①~③に準ずるものとして職業安定局長が定める訓練

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2025年4月28日 (月)

給与からおくれて控除されるものとは

Q 4月に新卒で入社して初めての給与を4月末にもらいました。保険料や税金などがもっと控除されているかと思いましたが、所得税と雇用保険料だけでした。後々他の控除も追加されて手取りが少なくなると先輩から聞きましたがどういう事でしょうか。


A 給与から控除できるものとして法律で定められているのは、社会保険料(健康保険料(介護保険料)・厚生年金保険料)、雇用保険料、所得税、住民税です。このうち、社会保険料は原則翌月から、新卒者の場合の住民税は2年目の6月から控除されます。


 社会保険料の控除は、前月分の社会保険料を当月支給の給与から控除するのが原則的な方法です。ご相談者の場合、4月に入社し社会保険に加入されているので5月支給の5月分給与から4月分の社会保険料が控除されます(支給日が翌月の場合、4月分の給与が5月に支給されるので4月分給与から控除されます)。その関係で、退職日が月末なら2か月分まとめて徴収されます。

 住民税(県民税・市町村民税)は、前年1年間(1月から12月)に一定以上の所得がある人に対して、1年おくれの翌年6月から納付がスタートする後払いです。ご相談者の場合、前年は学生アルバイトの収入のみで基準額以下(例 鳥取市:96万5千円)であれば入社1年目の年から翌年5月までは給与からの控除はなく、入社2年目の6月に支払われる給与から住民税の控除がスタートします。
(※詳細な基準額は自治体によって異なるのでお住まいの市町村にご確認下さい。)

給与明細書(例)5_3

「THE社会人~働く人のルールブック~」 みなくる編集 より


4月分の給与から控除されている所得税と雇用保険料は、入社時から発生するので初月から控除されます。所得税は毎月の給与から先払いで控除され(源泉徴収)、その年の給与総額が確定する12月の給与支払時に精算されます(年末調整)。

最初の給与から控除されるもの、おくれて控除されるものがあるのでいつから何が控除されているのか給与明細書で確認し把握しておきましょう。また賃金請求時効の少なくとも3年間は給与明細書を保管しておきましょう。

2025年3月31日 (月)

カスタマーハラスメント(カスハラ)対策と従業員の保護

Q お客様から、暴言や恫喝と言った度重なるクレームで従業員が疲弊しています。現在は上司が対応することもあるのですが、今後会社としてどう対応したり、何を準備しておけばよいのでしょうか。


A 使用者は労働契約法第5条により「労働者への安全配慮義務」を負っているので、ハラスメント対策を怠り労働者の健康を害することとなった場合、企業は使用者責任を問われる可能性があります。また、今後労働施策総合推進法などの改正によりカスハラ対策が企業に義務化される予定です。従業員の健康を守るためにも企業として事前にカスハラへの対策を取っておかれることは必須かと思います。

その対策の1つとしてあるのが、対応マニュアルの作成です。業種・業態によって内容は様々ですが、まずは社内で困っている事例を集め、カスハラの判断基準(クレームとの線引き)や対応のルールを検討し、実態に合った自社独自のマニュアルを作成してみましょう。同時に、自社のカスハラ事例を企業内で共有し、再発防止を行うことも大切です。カスハラを受けた従業員のケアも行なえるよう相談体制の整備もされておくことをお勧めします。

労働者が安心して働ける職場にするためにも、カスハラ対策を従業員個人に任せるのではなく、“企業として対応する”という姿勢を明確にすることが重要となります。

以下を参考に、早急に自社独自のマニュアルを作成されてはと思います。

厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」


社会的課題となっているカスタマーハラスメント(カスハラ)は、厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」において、「顧客からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現する為の手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の環境が害されるもの」と考えられています。

労働施策総合推進法などの改正案では、国が示す指針に基づいて対策を講じなければ指導や勧告を受けることになり、それに従わない場合は企業名を公表するとあります。

 

【カスハラに当たる言動や行為】
侮辱行為、威圧的な言動や暴言、恫喝、謝罪(土下座)などの不当要求、差別的・性的な言動、個人への攻撃、根拠のない過度なクレーム、迷惑行為や長時間の拘束、意味不明で終わりの見えない長話などです。

【一般的なクレームと悪質なクレーム】
一般的なクレームは商品の向上・改善を目的とし、商品やサービスに対する『要求』や『依頼』の形をとって伝えられる行為で、正しく対処すれば顧客と企業の両方にメリットをもたらします。

悪質なクレーム『嫌がらせ』を目的としたもの(カスハラ)で、要求を通せば通すほど悪化するため、適切な対処が必要です。

クレームとカスハラは似ていて非なるもの‼
例:商品の不具合の指摘は正当なクレームですが、理不尽な謝罪要求や暴言はカスハラに該当します。


flairポイント

カスタマーハラスメントは、従業員だけの対応に任せるのではなく、企業として毅然と対応されることが大切です。自社だけの対応では難しい場合もあるので、弁護士など専門家へも相談できるような体制の整備をお勧めします。

2025年2月21日 (金)

年次有給休暇(年休)使用時の賃金に固定残業代は入るのか

Q 来月末に退職予定で、来月1か月間は年休消化をする予定にしています。現在、固定残業代として月に3万円(20時間分)支給されていますが来月分の給料は固定残業代が付かないのでしょうか。


A 就業規則等で「年休中は所定労働時間の賃金を支払う」と規定されており、残業時間数が的確に把握され固定残業代が時間外労働に対する割増賃金として、実際の時間外労働に対応して処理されているのであれば固定残業代を除いた賃金が支払われる可能性があると思われます。固定残業代の支給と年休中の賃金計算方法についてご自分の労働条件通知書や会社の就業規則等で確認をしてみて下さい。


 固定残業代とは、「定額残業代」「〇〇手当」などの名称にかかわらず一定時間分の時間外労働、休日労働および深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金のことです。固定残業代を賃金に含める場合には「固定残業代を除いた基本給の額」「固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法」「固定残業時間を超える時間外労働、休日及び深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨」すべてを明確にして就業規則や労働条件通知書に記載しないといけません。その上で会社が労働者の残業時間数を的確に把握し正確に管理できているのであれば、固定残業代は時間外割増賃金の性格を有していると言えます。

 

年次有給休暇の賃金については、下記のいずれかを支払わなければなりません。また残業代を含めるか否かについてそれぞれ以下の違いがあります。

①平均賃金(Q いろいろな賃金の違い参照)・・・固定残業代を含めた総額で計算する
②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金・・・所定労働時間外の労働に対して支払われる賃金等は算入されない
③健康保険の標準報酬月額の30分の1に相当する金額・・・固定残業代を含めた額で決定する

①、②とする場合は就業規則等での規定、③とする場合には過半数労働組合(無い場合は労働者の過半数代表者)との書面による協定が必要です。年休中賃金の計算方法について会社の就業規則等で確認してみてください。

 

 年休中の賃金が上記②「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」であり、固定残業代が時間外割増賃金の性格を有していると確認できる場合、年休中の賃金に固定残業代を含まない事としても問題ありません。その場合、就業規則等で「1カ月に1日も出勤しなかった場合には固定残業代は支給しない」旨の規定があるかもしれないので確認をしてみて下さい。

 一方で、固定残業代について具体的な規定も無く残業時間についての把握や管理もされず実際の残業時間数にも関係なく固定残業代が支払われている場合には、固定給の一部と考えられるため固定残業代も含んで支給される必要があります。

 ご自分の労働条件通知書や会社の就業規則等で固定残業代や年休中の賃金についてどのように記載されているかを確認してみましょう。

2025年1月14日 (火)

親に介護が必要となったら

Q 正社員として入社20年です。先日、同居の母が脳梗塞で入院しました。退院後は自宅に帰る予定ですが、身体の一部に麻痺があるため、しばらくの間介護が必要となりそうです。できれば仕事を続けたいのですが、いったん退職するしかないのでしょうか。


A 家族が介護状態になると、日常の中でやるべきことが更に増え、仕事を続けることへの不安が生じます。時には「介護離職」も考えてしまいますが、収入やキャリアが途切れることや、生活が介護一色となり精神的な負担が増加する等のリスクがあるので慎重に検討しましょう。会社には、仕事と介護の両立のための様々な支援制度が整えられています。まずは上司へ相談して、自分に合った両立支援制度を活用しましょう。また、地域の介護サービスを活用し、介護を一人で抱え込まないようにしましょう。


≪仕事と介護の両立のために≫

  1. 職場に「家族等の介護を行っている」ことを伝え、会社の両立支援制度の説明を受けましょう。制度活用の意向確認がされますので、必要とする制度の利用を申し出ましょう。
    (みなくる通信2024.11月号「介護制度の周知義務化とは?」参照)
  2. 介護保険サービスを積極的に利用し、「ひとりで介護をしすぎない」「自分の時間を確保する」ことを心掛けましょう。
  3. ケアマネージャーや地域包括支援センターなど、介護について気軽に相談できる窓口を持ちましょう。

≪仕事と介護の両立支援制度≫…どの制度を利用するにも労働者からの申し出が必要です!
仕事を辞めることなく、働きながら要介護状態の対象家族の介護等をするために、以下の制度が利用できます。勤務先に制度がない場合でも、法律に基づいて以下の制度が利用できます(所定労働時間短縮等の措置を除く)。

※配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母(配偶者の祖父母は対象外)、兄弟姉妹及び孫(兄弟姉妹の子、孫は対象外)のうち、要介護2以上であること、又は常時介護を必要とする家族

 ・介護休業・・・対象家族一人につき、通算93日まで3回を上限として、介護のための休業を分割して取得できます(雇用保険の被保険者が休業する場合は、介護休業給付金として休業開始時の賃金日額の67%相当分が支給される場合があります)。会社から賃金が支払われない場合、雇用保険料は発生しませんが、社会保険料は納付しなければなりません。

介護休暇・・・要介護状態にある対象家族の介護・世話をするための休暇を時間単位で取得できます。対象家族が1人の場合、年5日(原則:毎年4/1~翌3月末)まで、2人以上の場合、年に10日まで取得可能です(一般的に無給。会社によっては有給の場合があります)。

所定外労働の免除(残業免除)・・・所定労働時間を超える労働が免除されます。介護終了まで何回でも取得可能ですが、1回の取得単位は、1か月以上1年以内の期間での請求となります。

時間外労働の制限・・・介護が終了するまで、1か月24時間1年150時間を超える時間外労働を制限することを請求できます。

深夜業の制限・・・介護が終了するまで、午後10時から午前5時までの労働の制限を請求できます。

所定労働時間短縮等の措置・・・利用開始の日から3年以上の期間で、2回以上利用が可能な事業主が講じた措置のうち、短時間勤務フレックスタイム制度時差出勤介護費用の助成いずれかを利用できます。

・不利益取り扱いの禁止・・・介護休業などの制度の申し出や取得を理由とした解雇など不利衛な取り扱いが禁止されています。

・ハラスメント防止措置・・・上司・同僚からの介護休業等を理由とする嫌がらせ等と防止する措置を講じることが事業主に義務付けられています。

≪短時間勤務が利用できる場合の取得例≫

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会社が短時間勤務制度を措置し、それを利用した場合は、短縮された時間に相当する賃金は減額されるのが一般的です。短時間勤務制度を取得できる期間やその手続き、賃金等のルールは就業規則で定められているので、利用を希望する際は就業規則を確認しましょう。


flairポイント!

①会社の両立支援制度へ関心を持ち、介護を行う側の状況を把握するとともに、いざという時のために介護される側の希望を事前に確認しておきましょう。

②家族の介護は突然必要となるケースが多いため、もしもに備えて、職場内での情報の共有や業務のマニュアル化を進めましょう。

③入社1年未満の労働者と、週の所定労働日数が2日以下の労働者を労使協定により、両立支援制度の利用対象外としている場合があるので会社へ確認しましょう。

2024年11月28日 (木)

2025年4月からの介護制度の周知義務化とは?

Q 社員から介護の為に退職の相談をされた場合、会社としては勤務を継続してほしいのですが、制度や判断基準などの両立支援についてよく分かりません。面談などもどのように進めればいいでしょうか。


A 事業主は、仕事と介護の両立支援制度を十分活用できないまま介護離職に至ることを防止するため、仕事と介護の両立支援制度の個別周知と意向確認により効果的な周知を図るとともに、両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備を行わなければなりません。また、就業規則の整備も合わせてしておく必要があります。
面談では、申出をした労働者のおかれている状況を丁寧に聞き取り、どの制度を利用すれば退職を避けることができるのかを相談しましょう。


【 事業主側 】の義務とポイント

・事業主は介護に直面した旨の申出をした労働者に対して、介護休業と介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるようにするため、以下の①~④いずれかの措置を講じなければならない義務があります。

  • 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
  • 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備 相談窓口の設置
  • 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
  • 自社の労働者へ介護休業・介護両立支援制度等の取得促進に関する方針の周知

 

周知することがポイント

介護休業及び介護両立支援制度等を取得しやすい環境整備の措置として、
相談窓口や相談対応者を設置した場合も従業員へ周知しなければいけません。

 ~具体的な面談のポイント

・従業員から個別に家族の介護が必要だと相談や申し出があった場合、面談などを通じて利用できる制度を知らせることを義務化することとなっています。
周知事項と介護休業の取得・介護両立支援制度等の利用の意向確認を、個別に行わなければなりません。その際、取得・利用を控えさせるような個別周知と意向確認は認められません。

・会社の管理者や面談担当者は、研修を受講するなどの準備をしておくことで円滑に面談に対応できます。

  ☆相談面談での両立課題の共有
  ☆両立支援制度の説明、社内外の手続き等について必要書類の説明や、介護が必要となった場合に相談できる地域の窓口の周知(地域包括支援センターの案内) など
  ☆働き方の調整について
  ☆職場内の協力、理解の譲成
  ☆上司や人事による継続的な心身の状態の確認
  ☆社内の協力的なネットワークづくり

参照 育児・介護休業法改正ポイントのご案内
厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)

・介護に直面していない段階の従業員の場合でも、仕事と介護の両立支援制度を十分活用できないまま介護離職に至ることを防止するため、介護に直面する前の早い段階(40歳等)に介護休業および介護両立支援制度等に関する情報提供や、相談や申し出時に利用できる制度を従業員に知らせなければならないとされています。

※ 40歳になって介護保険に加入する際に、全従業員に介護休業などの支援制度を書面で知らせることを企業に義務付ける。とされています。
~2025(令和7)年度より施行「介護休業制度などの個別周知及び意向確認」の義務化より ~


【 労働者側 】の理解とポイント

介護休業とは、要介護状態になった家族を介護するため、労働者が利用できる休業制度
です。要介護状態とは、育児・介護休業法では、「負傷や疾病をはじめ、身体や精神上の障害で2週間以上の期間におよぶ常時介護が必要な状態」と定めています。

「要介護状態」とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態のことで、まだ要介護認定を受けていない段階でも、
介護休業の対象となります。この常時介護を必要とする状態については、判断基準が定められています。

介護休業の判断基準とは、常時介護を必要とする状態に関する判断の基準があります。

※介護休業は2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある対象家族を介護するための休業で、常時介護する状態については基準に従って判断されることになります。

(1)介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること。
(2)状態①~⑫のうち、2が2つ以上又は3が1つ上該当し、かつ、その状態が継続すると認められること。

 

項目  状態

    1

    2

    3

①    

座位保持(10分間一人で座っていることが出来る)

自分で可

支えてもらえばできる

できない

②    

歩行(立ち止まらず、座り込まずに5m程度歩くことができる)

つかまらないで
できる

何かにつかまればできる

できない

③    

移乗(ベットと車いす、車いすと便座の間を移るなどの乗り降りの動作

自分で可

一部介助、見守り等が必要

全面介助が必要

④    

水分・食事摂取

自分で可

一部介助、見守り等が必要

全面介助が必要

⑤    

排泄

自分で可

一部介助、見守り等が必要

全面介助が必要

⑥    

衣類の着脱

自分で可

一部介助、見守り等が必要

全面介助が必要

⑦    

意思の伝達

できる

ときどきできない

できない

⑧    

外出すると戻れない

ない

ときどきある

ほとんど毎回ある

⑨    

物を壊したり衣類を破くことがある

ない

ときどきある

ほとんど毎回ある

⑩    

周囲の者が何等かの対応を取らなければならないほどの物忘れがある

ない

ときどきある

ほとんど毎回ある

 

⑪    

薬の内服

自分で可

一部介助、見守り等が必要

全面介助が必要

⑫    

日常の意思決定

できる

本人に関する重要な意思決定はできない

 

参照 育児介護休業法のあらまし(厚生労働省)

会社は、介護休業の申出を受けた場合、労働者に申出に係る対象家族が要介護状態にあることを証明する書類の提出を求めることができるとされています。
証明書類は「医師の診断書」等に限定されておらず、提出可能な書類でよいとされています。


flairポイント!  

介護休業における「93日」は、自力で家族を介護するためだけの期間ではありません。介護は93日では足りず、年数のかかる場合が多いものです。仕事と介護を両立する為、今後の長期的な介護に関する方針を決めるまでの間、当面、家族による介護がやむを得ない期間について、緊急的対応措置として、休業ができるようにすることが必要であるという観点から創設されています。 労働者が家族の介護をひとりで抱えずに、職場、福祉、地域の活用などを含め、必要な支援チームで乗り越えるための方法を検討・準備する期間と考え「介護休業」を有効活用していきましょう。

                     

2024年10月 3日 (木)

災害時の時間外労働等について

Q 災害が発生すると、行政などから早期復旧のための支援協力要請が会社にあります。この場合、時間外・休日労働などで気をつけることはあるのでしょうか。


A  ライフラインの早期復旧のような人命・公益の保護を目的とする場合、事業主は36協定で定める限度時間とは別に、時間外・休日労働を行わせることができます。「災害その他避けることができない事由によって、臨時の必要がある場合」労働基準監督署長の許可を受ければ(事後、遅滞なく届出も可)、労働基準法第33条第1項において必要な範囲内に限り、時間外・休日労働が認められています。
ただ、労働基準法第33条には労働時間の上限規制は定められておらず、“必要な限度の範囲内に限り認められる”とされているので、長時間労働となりがちです。労働者の健康被害の防止のために労働時間を把握した上で、出来る限り月45時間以内に収めるよう努め、状況に応じて、医師の面接指導などを行いましょう。


【原則】

労働時間・休日の原則及び時間外・休日労働の上限

1.【労働時間、休日の原則】 (労働基準法第 32 条、第 35 条)

  労働時間の限度は、原則、1日8時間、1週40時間 です。
  また、少なくとも1週間に1日または4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。

2.【時間外・休日労働の上限】 (労働基準法第 36 条)

  法定労働時間を超えて時間外労働させる場合や法定休日に労働させる場合には、あらかじめ労使で                      「36協定」を結び所轄労働基準監督署に届け出る必要があります 。
 *月45時間以内 年間 360時間以内 (休日は含まない)

臨時的な特別の事情で労使が合意(特別条項)にはこの上限を超えることができますが、その場合でも

時間外労働(休日労働は含まず)   年720時間以内
*時間外労働+休日労働        月100時間未満 ・ 2~6カ月平均80時間以内
*時間外労働が45時間を超える月   年6カ月が限度

【例外規定】

災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等について(労働基準法第33条第1項)

災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合には、事業主は、上の1及び2の労働時間を延長して、または法定休日に労働させることができます。その場合、労働基準監督署⾧の許可が必要ですが、事態急迫のために許可を受ける暇 がない場合においては、事後に遅滞なく届け出を行う必要があります。

この場合、2の上限規制にかかわらず、必要な範囲内に限り、時間外、休日労働をさせることも可能となります。

【災害その他避けることのできない事由とは(許可基準)】

①単なる業務の繁忙その他これに準ずる経営上の必要は認められません。
②地震・津波・風水害・雪害・爆発・火災時等の災害への対応(差し迫った恐れがある場合における事前の対応を含む。)、急病への対応その他の人命又は公益を保護するための必要は認められます例えば、災害その他避けることのできない事由により被害を受けた電気、ガス、水道等のライフラインや安全な道路交通の早期復旧のための対応、大規模なリコール対応は含まれます。
③事業の運営を不可能とさせるような突発的な機械・設備の故障の修理、保安やシステム障害の復旧は認められますが、通常予見される部分的な修理、定期的な保安は認められません。例えば、サーバーへの攻撃によるシステムダウンへの対応は含まれます。
④上記及び③の基準については、他の事業場からの協力要請に応じる場合においても、人命又は公益の確保のために協力要請に応じる場合や協力要請に応じないことで事業運営が不可能となる場合には、認められます。

※上記の許可基準はあくまで例示であり、限定列挙ではありません。


災害の際、多くの企業は普段の業務と大幅に異なる対応を求められます。労働時間を延長したり、休日労働等、復旧対応や保守等の業務にあたったりしなければならない企業もでてきます。

災害等による臨時の必要がある場合の時間外・休日労働(労基法第33条)は、あくまでも必要な限度の範囲内に限り認められ、過重労働による健康障害を防止することが重要です。事業主は、やむを得ず長期に時間外労働や休日労働をさせた労働者には、医師の面接指導等を実施し、健康被害を防ぐための労務管理を徹底しましょう。

参考  過重労働による健康障害を防ぐために  
        厚生労働省 労働基準法第33条(災害時の時間外労働等)について抜粋


flairポイント!

★ 災害等による臨時の必要がある場合の時間外労働等(労基法第33条)は、必要な範囲内に限って認められるので、労働時間を把握し、労働者の健康管理を行いましょう。

★ 割り増し賃金は必ず支払いましょう。
  (割増率は、時間外労働25%以上・60時間超は50%以上、休日労働35%以上)

2024年8月23日 (金)

日によって所定労働時間数が異なる場合の時間単位の年次有給休暇について

Q 私は、週3日間(月・水・金)は6時間、週2日間(火・木)は4時間の労働契約で週5日パート勤務をしています。私のような働き方でも半日や時間単位の有給休暇は取得できるのでしょうか。また、時間単位の年次有給休暇を取得する場合は、年間何時間取得できるのでしょうか。


A 年次有給休暇は日単位で取得することが原則ですが、労働者が希望し、使用者が同意した場合であれば、半日単位の取得も可能です。また、労使協定が締結されている会社であれば、年に5日を限度として時間単位の年次有給休暇が取得できます。

日によって所定労働時間が異なる場合の1日分の労働時間数は、1年間(または決められている期間)における1日平均所定労働時間数に基づいて定めることになります。

 ①1日の所定労働時間は以下のとおりです。
 (6時間×3日+4時間×2日)÷5日=5時間12分→1時間未満を切り上げ1日6時間とする。

 ②時間単位の年次有給休暇としての総時間数
  6時間×5日=30時間分の時間単位年休

 時間単位の年次有給休暇は、30時間となりますが、労使協定の有無を確認しましょう。


 年次有給休暇は、要件を満たした労働者に付与される法律で認められた休暇で、所定労働日に賃金をもらいながら休むことができます(労働基準法第39条)。

 日単位での取得が原則ですが、労働者が希望し、使用者が同意した場合であれば、日単位取得の阻害とならない範囲で、半日単位の取得が可能です(労使協定不要)。また、年次有給休暇を有効に活用できるようにすることを目的として、労使協定が締結されれば、労働者は年に5日を限度として時間を単位とする年次有給休暇が取得できます。前年度から繰り越した年次有給休暇がある場合、その繰り越し分も含めて5日分以内の取得とされ、分単位などの時間未満の単位は認められません

 年次有給休暇は、原則、労働者が請求する時季に与えなければなりませんが、請求された時季に休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、使用者は他の時季に与えることができます。また、事業の正常な運営との調整を図る観点から、労使協定で一部の労働者を時間単位年休の対象外とすることができ、対象外の労働者に該当すると時間単位年休は取得できません。

まずは、労使協定の有無と対象労働者の範囲を確認することが必要です。

 

年次有給休暇の時間単位付与のための労使協定に規定する内容

①  時間単位年休の対象労働者の範囲
②  時間単位年休の日数(前年度からの繰り越しを含めて5日以内)
③  時間単位年休1日の時間数(1日分の平均所定労働時間数を基に定める。時間に満たない端数は時間単位に切り上げ)
④  1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数(2時間、3時間など。ただし、1日の所定労働時間を上回ることはできない)

なお、時間単位年休を取得した場合の賃金額は、日単位による取得の場合の計算と同様とされ、就業規則に定められているので確認しましょう。

2024年7月16日 (火)

グレーゾーンを放置しないハラスメント防止の取り組み(その3)

Q 社内でハラスメントの相談担当を行っています。複数の従業員から、「特定の管理者からパワハラを受けた」との苦情が寄せられ調査をしましたが、パワハラとは認定されませんでした。しかし、この問題に対して、会社として何もしなくてもいいのでしょうか?


A 管理職の言動が「ハラスメント」と認定されなかったとしても、その行為は、同じ職場で働く労働者の能力発揮に重大な影響を与える可能性が高いと思われます。就業環境を害するおそれがある言動については、職場全体でハラスメント防止の意識を高め、防止のための取り組みを積極的に行っていくことが大切です。


 パワハラ防止指針では、相談者と行為者への個々の対応にあわせて、職場全体に向けたハラスメントの再発防止措置を講じることが求められています。
   ハラスメントを防止するための取り組みとしては、以下のことが考えられます。

 

  (1) ハラスメント防止規定を作成し、事業主が従業員へメッセージを発信する

就業規則や服務規律の中にハラスメント防止規定を作成し、事業主が「ハラスメントを行ってはならない旨の方針および職場におけるハラスメントを行ったものに厳正に対処する旨の方針」を明確に表明しましょう。トップが方針を表明することによって、従業員が安心して働くことができ、社内の相談窓口も利用しやすくなります。また、行為者に対しても、規定にそって処分されるかもしれないという心理的な抑止力にもなります。

トップの方針表明の場としては、従業員へ向けた挨拶の時(朝礼、年末年始の会、月例会、事業報告会、社内研修会等)に伝えるのが望ましいが、社内報やパンフレット、ホームページなどの広報や啓発のための資料などに掲載したり、配布したりすることも効果があります。

 

(2)実態を把握する

アンケート等を実施することで、従業員のSOSの声を上げやすくする取り組みもよいでしょう。アンケートは無記名で実施するのが効果的です。自分自身が被害にあっている場合もあれば、周りの同僚が被害にあっていることもあります。早期に情報をキャッチすることで、被害を最小限に食い止めることができます。

 

(3)教育研修の実施

従業員に対して、ハラスメントに関する研修、講習などを計画的に実施しましょう。

対象としては、管理者や一般職、非正規労働者も含めて実施しましょう。

内容としては、ハラスメントの基礎知識(パワハラ・セクハラ・マタハラ等)の座学や、コミュニケーション研修(アサーション、アンガーマネジメント等)など実践的な内容もよいです。また、グループワークなどを取り入れた内容の研修は、人との価値観の違いを再認識することができたり、自分の言動を振り返ることができたりし、相手への気遣いや思いやりなど人権意識を高めることが期待できます。

 

(4)相談窓口の周知・啓発

 ハラスメントの相談窓口を社内に限定せず、社外の人事労務やカウンセラーなどの専門家に依頼して設置することも可能です。相談する従業員からみれば、選択肢が多い方が事情に応じて選択できるというメリットがあります。

いずれにしても、ハラスメントの相談窓口を気軽に利用してもらえるよう、ポスターやカード、社内イントラを活用して従業員へ周知しましょう。

相談方法も電話・窓口だけでなく、メールやチャット等でも利用できるよう工夫してみましょう。

 

(5)日頃の声掛けの中で予防活動

ハラスメントの被害を受けている人は、元気がなかったり口数が少なくなったりと、職場で孤立しがちです。相談窓口に相談をする勇気が持てない人も多いです。相談担当者は、窓口で相談を待つだけではなく、自ら声をかけていくことも時には必要です。日頃の何気ない挨拶や会話をきっかけに、困りごとの相談がスタートすることもあります。

「パワハラと認定されないので大丈夫!」ではなく、ハラスメントの芽を早めに摘んでおくことが大切です。相談窓口担当者が積極的に働きかけることで、未然にハラスメントを防止することができたり、被害を最小限に留めたりすることができます。

 

(6)相談窓口担当者のケアも大切に

職場における人間関係の調整は、精神的にも身体的にもストレスの負荷がかかり、ハラスメント相談担当者自身もメンタルダウンするリスクはあります。担当者だけがひとり抱え込んで頑張るのではなく、職場の人事・総務・安全衛生の担当者と連携しながら、出来るところから取り組んでいきましょう。場合によっては、外部のスーパーパイザーやカウンセリングが利用できる体制整備も必要です。

行政の利用できるサービスや相談窓口もありますので、積極的に活用されることをお勧めします。 


厚生労働省ポータルサイト

ハラスメント対策「あかるい職場応援団」

働く人のメンタルヘルス「こころの耳」

 

2024年6月14日 (金)

パワハラ認定における懲戒処分(その2)

Q 中小企業の社長をしています。先日、社内のハラスメント相談担当者より、パワハラ事案がありその調査結果の報告を受けました。報告内容を聞くと、パワハラ行為者への懲戒処分を検討しなければならないと感じているのですが、気を付けておくことはありますか?


A  パワハラ行為者への懲戒処分をするときには、就業規則に懲戒の種類、懲戒の事由が定められ、従業員に周知されていなければなりません。処分内容についても、事案の内容と比較して重すぎる懲戒処分は無効となる可能性があります。懲戒処分には、客観的に合理的な理由と社会通念上相当であることが求められるので、慎重に判断しましょう。


【ハラスメント対策委員会の設置と事実確認】

パワハラの認定においては事業主のみで判断せず、人事部長や労働者代表(労働組合役員等)、外部の専門家(顧問弁護士や顧問社労士)などのメンバーで構成された委員会(ハラスメント対策委員会)を設置して、ここが中心となって判断していくことが望ましいです。

ハラスメント対策委員会は、パワハラ事案の報告書をもとに、相談者・行為者双方から再度事実関係を確認します。処分に先立ち、パワハラ行為者に弁明の機会を与えることも必要です。

●パワハラと認定できなかった場合
ハラスメント対策委員会でパワハラと認定できなかった場合、相談者・行為者に報告することとなります。その時、相談者から再調査を求められた場合、相談者の納得できない気持ちを傾聴しつつも、新たな事実が出てきた場合のみ対応し、会社としては適正な対処を行った上での調査結果や判断であることを伝えましょう。

【パワハラと認定された場合】
パワハラと認定されたら、そのパワハラ行為が懲戒に値する内容かどうかを検討します。
懲戒処分の判断に際しては、下記の「考慮すべき要素」を参考にしてください。重すぎる懲戒処分は無効となるので、注意してください(労働契約法第15条)。

<パワハラの行為者に対する懲戒処分にあたり、考慮すべき要素>

・パワハラ行為の内容、頻度や期間、常習性
・パワハラ行為についての他の相談者の数
・パワハラによる相談者の被害の程度(相談者が退職に追い込まれているかどうか、精神疾患にり患するなど、健康上の問題が生じているかどうか)
・行為後の謝罪や反省の有無(パワハラではないと否定したり、開き直っているのか否か)
・行為者の過去の懲戒処分歴の有無
・職責、管理職が行為者なのかどうか   など

 パワハラは悪質ないじめ行為等の場合もありますが、熱心に指導をした内容が行き過ぎてしまったという場合もあります。パワハラ自体は許されない行為ですが、その処分にあたっては、懲戒処分として処罰をするのが適切か否かも含めて検討が必要でしょう。

(例)行き過ぎた発言があり最終的にパワハラと評価される行為をした社員が、真摯に反省している場合などにおいて、安易に懲戒処分を選択したことで、会社への貢献意欲等を喪失し、貴重な人材を失うということもあります。

 懲戒処分に値する行為が行われた場合であったとしても、懲戒処分ではなく厳重注意処分(次回同種の問題を起こせば厳しい懲戒処分を行う旨の警告付き)程度にとどめ、改善の機会を付与するという場合もあります。
 しかし、一方で行為者の反省の意思がなく繰り返しパワハラ行為等を行う悪質な従業員の場合は、放置しておくこと自体が極めて問題であり、被害が深刻化しますので、懲戒処分をすることも許容されます。

懲戒処分の種類は、「戒告・けん責・訓戒」「減給」「出勤停止」「降格処分」「諭旨解雇」「懲戒解雇」など、会社によって様々です。

 

【懲戒処分を決定したら】
 会社によってパワハラの再発防止を目的として、懲戒処分を公表する場合があります。ただし、公表するか否かは、行為者だけでなく、パワハラ被害者のプライバシーを保護する観点からも慎重な判断が求められます。

行為者へは、懲戒処分の内容を伝えるとともに、行為者の言動がなぜハラスメントに該当し、どのような問題があるのかを真に理解させることが大切です。

相談者(被害者)へは、行為者との関係改善に向けた援助や、行為者と引き離すための配置転換、また行為者から謝罪させる、などの配慮措置が求められます。その時、相談者(被害者)の意思を尊重するように心がけましょう。また、相談者の労働条件上の不利益の回復やメンタル不調があれば、管理監督者や産業保健スタッフと連携を取りながら対応しましょう。

 懲戒処分については、弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談しながら、慎重に対応されることをお勧めします。