予備校講師の労働者性について
Q 予備校で長く講師をしており、契約は業務委託契約です。決められた講義時間の講師をし、その対価として報酬が支払われています。しかし、授業の準備やテストの採点,授業後の生徒からの質問対応など労働時間が長くなりがちです。このような働き方は、労働基準法などの労働法の適用はうけないのでしょうか。
A 業務委託契約の名称で契約されていても、実質上の使用従属関係があれば、労働者と判断され、労基法の適用を受けることとなります。
働き方の多様化により、会社と直接の雇用関係にないケースでの働き方も増えつつあり、業務委託契約もその1つの働き方です。
業務委託は、業務遂行を目的とする「委任契約」と業務の成果物を目的とする「請負契約」に分かれますが、いずれも受託者の業務の進め方や働き方に対して、委託者が口出しすることはできません。受託者がどのように業務を行うのかは、受託者の裁量に委ねられています。もし委託者が直接指示を出したり、管理したりすると、受託者の労働者性が認められる可能性があります。そうなると雇用関係にあると判断され、労基法上の保護の対象となります。
労働者かどうかを判断する上で「どのような契約か」よりも「実態としてどんな働き方をしているのか」が重要で、下記の要素を総合考慮して判断されます。
<使用従属性に関する判断基準>
1.指揮監督下の労働
イ)仕事の依頼、業務従事の指示等に対する許諾の自由の有無
ロ)業務遂行上の指揮監督の有無
ハ)拘束性の有無(勤務場所・時間の指定や管理)
ニ)代替性の有無(本人に代わって補助者等が労務を提供することが認められているか)
2.報酬の労務対償性(報酬が仕事の成果ではなく、時間給や日給で定められているか)
<労働者性の判断を補強する要素>
1.事業者性(個人事業主)の有無
イ)機械、器具の負担関係(高額な器具を自ら準備している場合は労働者性を弱める事情となる)
ロ)報酬の額(他の正社員より著しく高額な報酬が支払われている場合には、労働者性を弱める事情となる)
2.専属性の程度(特定の企業に従事している場合は、労働者性を補強する事情となる)
3.保険料の負担(雇用保険料や社会保険料が控除されている場合は、労働者性を補強する事情となる) など
ポイント!
以下のようなことがあれば、“労働者性がある”と判断される可能性が高いので、委託契約書等の書類を持って専門機関へ相談しましょう。
・出退勤をタイムカードで管理され、遅刻や早退した場合に欠勤控除される。
・仕事の進め方や作業手順を、自分の判断で決めることができない。
・給料が時間で支払われており、給与所得として源泉徴収される。
・仕事を依頼されても、拒否することができない。