Q 職場のハラスメント相談窓口担当者に任命されました。先日、パワハラを受けているという内容のメールが届き、今度対面でお話を聞くこととなりました。相談対応をするときの注意点や気を付けておくことを教えてください。
A まず、社内の就業規則やハラスメント防止規定を確認し、相談窓口担当者の役割がどこまでなのか事前に把握しておきましょう。話を聞く時は、公平・中立を意識しながら、相手の話を最後までしっかり聞きましょう。
全ての事業主には、職場におけるハラスメント防止措置が義務化されており、パワハラ等の相談に適切に対応するために必要な体制の整備を行わなければなりません。
ハラスメントの相談体制は各職場で異なるので、就業規則や服務規律(ハラスメント防止規定)などで事前に確認しておきましょう。また、ハラスメントの相談から懲戒処分までの流れやハラスメント相談担当者の果たすべき役割の範囲も確認しておきましょう。
【相談対応する前の注意点】
- 事実関係を正確に把握するためにも、行為者・相談者・関係者への聞き取りは2名で対応し、聞き手担当、記録担当と役割分担しておくとよいでしょう。また、当事者や関係者と利害関係のない担当者を選任することが望ましいです。
- 双方の話を聞く時は、どちらかに肩入れしすぎないよう公平・中立に話を聞くよう心がけましょう。先入観をできるだけ持たないようにしましょう。
- 相談者に対して、「ハラスメント相談担当者には守秘義務が課せられていること」、「相談したことを理由に不利益な取扱しないこと」「プライバシーは保護されること」を十分説明し、安心して話せる環境を作りましょう。
- 相談者および行為者・第三者には、調査にあたって、聞き取りを受けたことやその内容について口外しないことを約束させましょう。また行為者に対して、報復行為は禁止であることを強調しておきましょう。
【相談内容を聞く時の留意点】
パワハラの相談があった場合、会社はパワハラの有無を調査し、事実関係を正確に把握することが大切です。
<相談者への聞き取り>
(1) 最初の聞き取りでは「指導」や「判断」をすることはせず、相談者の言い分に耳を傾け(傾聴)、気になる点があったとしても、反論したり、話を遮ったりせずに、最後まで話を聴きましょう。
(2) 相談を聞く時は、具体的な事実確認に徹して話を聞きましょう。「いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように」など、問題となった発言や行為、その言動に至る経緯、行為者と相談者の関係などについても詳細に調査しましょう。
(3) 相談者の心身の状態を把握しましょう。傷害を負っていないか、精神的にまいっていないかどうか(睡眠や食欲、体調の変化等)を確認しましょう。場合によっては医療機関の受診や産業医へつなぎましょう。
(4) 相談者が何を望んでいるのか確認しておきましょう(ただ聞いてほしいだけなのか、懲戒処分をしてほしいのか、配置転換を希望するのか、等)。
<行為者・第三者への聞き取り>
(5) 行為者および第三者への聞き取りについては、相談者の了解を得てから行いましょう。相談者の了解が得られない場合は、行為者等への聞き取りは原則できません。しかし、放置しておくと職場環境に重大な影響を与えかねない場合や相談者が不利益を被る恐れがある場合は、行為者・第三者への聞き取りの必要性について、相談者に十分理解してもらうよう話し合いましょう。
(6) 相談者の主張が必ずしも事実とは限りません。行為者への聞き取りの際は、あくまでも中立的な立場であることを意識して、先入観を持たないよう、話を聞くことが大切です。
(7) パワハラの対象となる行為を行為者が認めている場合は、その内容を記録しておきましょう。逆に行為者が対象行為を認めていない場合は、相談者や第三者から再度聞き取りを行いましょう。
相談者・行為者・第三者の言い分を照らし合わせ、双方の言い分に食い違いがある場合は、客観的な証拠や目撃者等の第三者の証言に照らして、どちらの言い分が信ぴょう性が高いのかを判断しましょう。話の内容に一貫性があるか、矛盾がないかなども判断の要素となります。
【聞き取り後の対応 ~担当者の役割の範囲~】
パワハラの事実関係の聞き取りが終わると、パワハラの有無について判断することになりますが、ハラスメント相談担当者の役割が、聞き取りまでなのか、パワハラの判断や処分にまで関与するのか、企業や担当者の職責によって異なりますので、再度確認しておきましょう。
企業によっては、ハラスメント相談担当者の役割を内容の聞き取りと取りまとめまでとし、社内で構成した専門委員会(例:ハラスメント対策委員会等)が、報告内容に応じてパワハラの認定や処分を行うという役割分担をしている場合があります。 |
【相談者(被害者)に対する配慮措置の実施】
パワハラの相談があった場合(最終的な調査結果を待たずとも)、速やかに相談者(被害者)に対する配慮措置を行うことが求められます。相談者と行為者との関係改善に向けた援助や、行為者と引き離すための配置転換、また行為者から謝罪させる、などの対応が考えられますが、相談者(被害者)の意思を尊重するように心がけましょう。
【再発防止に向けた措置】
パワハラ防止指針では、相談者と行為者への個々の対応にあわせて、職場全体に向けたハラスメントの再発防止措置を講じることが求められています。
ハラスメントがあったのか、又はハラスメントに該当するのか否かの認定や事実確認も重要ですが、問題となっている言動が改善され、良好な職場環境を回復するためにはどうしたらよいのかも同時に考え、行動することが大切です。
参考フロー図
企業によって相談体制は異なるので、あらかじめハラスメント相談窓口担当者に任せる職務の範囲を明確にしておきましょう。
(参考)厚生労働省:「職場における、パワーハラスメント対策、セクシュアルハラスメント対策、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です!」(令和4年11月作成)より抜粋【相談・苦情への対応の流れの例】
関連ページ 職場でのいじめ・パワーハラスメント