親に介護が必要となったら
Q 正社員として入社20年です。先日、同居の母が脳梗塞で入院しました。退院後は自宅に帰る予定ですが、身体の一部に麻痺があるため、しばらくの間介護が必要となりそうです。できれば仕事を続けたいのですが、いったん退職するしかないのでしょうか。
A 家族が介護状態になると、日常の中でやるべきことが更に増え、仕事を続けることへの不安が生じます。時には「介護離職」も考えてしまいますが、収入やキャリアが途切れることや、生活が介護一色となり精神的な負担が増加する等のリスクがあるので慎重に検討しましょう。会社には、仕事と介護の両立のための様々な支援制度が整えられています。まずは上司へ相談して、自分に合った両立支援制度を活用しましょう。また、地域の介護サービスを活用し、介護を一人で抱え込まないようにしましょう。
≪仕事と介護の両立のために≫
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≪仕事と介護の両立支援制度≫…どの制度を利用するにも労働者からの申し出が必要です!
仕事を辞めることなく、働きながら要介護状態の対象家族※の介護等をするために、以下の制度が利用できます。勤務先に制度がない場合でも、法律に基づいて以下の制度が利用できます(所定労働時間短縮等の措置を除く)。
※配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母(配偶者の祖父母は対象外)、兄弟姉妹及び孫(兄弟姉妹の子、孫は対象外)のうち、要介護2以上であること、又は常時介護を必要とする家族
・介護休業・・・対象家族一人につき、通算93日まで3回を上限として、介護のための休業を分割して取得できます(雇用保険の被保険者が休業する場合は、介護休業給付金として休業開始時の賃金日額の67%相当分が支給される場合があります)。会社から賃金が支払われない場合、雇用保険料は発生しませんが、社会保険料は納付しなければなりません。
・介護休暇・・・要介護状態にある対象家族の介護・世話をするための休暇を時間単位で取得できます。対象家族が1人の場合、年5日(原則:毎年4/1~翌3月末)まで、2人以上の場合、年に10日まで取得可能です(一般的に無給。会社によっては有給の場合があります)。
・所定外労働の免除(残業免除)・・・所定労働時間を超える労働が免除されます。介護終了まで何回でも取得可能ですが、1回の取得単位は、1か月以上1年以内の期間での請求となります。
・時間外労働の制限・・・介護が終了するまで、1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働を制限することを請求できます。
・深夜業の制限・・・介護が終了するまで、午後10時から午前5時までの労働の制限を請求できます。
・所定労働時間短縮等の措置・・・利用開始の日から3年以上の期間で、2回以上利用が可能な事業主が講じた措置のうち、短時間勤務、フレックスタイム制度、時差出勤、介護費用の助成のいずれかを利用できます。
・不利益取り扱いの禁止・・・介護休業などの制度の申し出や取得を理由とした解雇など不利衛な取り扱いが禁止されています。
・ハラスメント防止措置・・・上司・同僚からの介護休業等を理由とする嫌がらせ等と防止する措置を講じることが事業主に義務付けられています。
≪短時間勤務が利用できる場合の取得例≫
会社が短時間勤務制度を措置し、それを利用した場合は、短縮された時間に相当する賃金は減額されるのが一般的です。短時間勤務制度を取得できる期間やその手続き、賃金等のルールは就業規則で定められているので、利用を希望する際は就業規則を確認しましょう。
ポイント!
①会社の両立支援制度へ関心を持ち、介護を行う側の状況を把握するとともに、いざという時のために介護される側の希望を事前に確認しておきましょう。
②家族の介護は突然必要となるケースが多いため、もしもに備えて、職場内での情報の共有や業務のマニュアル化を進めましょう。
③入社1年未満の労働者と、週の所定労働日数が2日以下の労働者を労使協定により、両立支援制度の利用対象外としている場合があるので会社へ確認しましょう。