カスタマーハラスメント(カスハラ)対策と従業員の保護
Q お客様から、暴言や恫喝と言った度重なるクレームで従業員が疲弊しています。現在は上司が対応することもあるのですが、今後会社としてどう対応したり、何を準備しておけばよいのでしょうか。
A 使用者は労働契約法第5条により「労働者への安全配慮義務」を負っているので、ハラスメント対策を怠り労働者の健康を害することとなった場合、企業は使用者責任を問われる可能性があります。また、今後労働施策総合推進法などの改正によりカスハラ対策が企業に義務化される予定です。従業員の健康を守るためにも企業として事前にカスハラへの対策を取っておかれることは必須かと思います。
その対策の1つとしてあるのが、対応マニュアルの作成です。業種・業態によって内容は様々ですが、まずは社内で困っている事例を集め、カスハラの判断基準(クレームとの線引き)や対応のルールを検討し、実態に合った自社独自のマニュアルを作成してみましょう。同時に、自社のカスハラ事例を企業内で共有し、再発防止を行うことも大切です。カスハラを受けた従業員のケアも行なえるよう相談体制の整備もされておくことをお勧めします。
労働者が安心して働ける職場にするためにも、カスハラ対策を従業員個人に任せるのではなく、“企業として対応する”という姿勢を明確にすることが重要となります。
以下を参考に、早急に自社独自のマニュアルを作成されてはと思います。
社会的課題となっているカスタマーハラスメント(カスハラ)は、厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」において、「顧客からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現する為の手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の環境が害されるもの」と考えられています。
労働施策総合推進法などの改正案では、国が示す指針に基づいて対策を講じなければ指導や勧告を受けることになり、それに従わない場合は企業名を公表するとあります。
【カスハラに当たる言動や行為】
侮辱行為、威圧的な言動や暴言、恫喝、謝罪(土下座)などの不当要求、差別的・性的な言動、個人への攻撃、根拠のない過度なクレーム、迷惑行為や長時間の拘束、意味不明で終わりの見えない長話などです。
【一般的なクレームと悪質なクレーム】
一般的なクレームは商品の向上・改善を目的とし、商品やサービスに対する『要求』や『依頼』の形をとって伝えられる行為で、正しく対処すれば顧客と企業の両方にメリットをもたらします。
悪質なクレームは『嫌がらせ』を目的としたもの(カスハラ)で、要求を通せば通すほど悪化するため、適切な対処が必要です。
クレームとカスハラは似ていて非なるもの‼
例:商品の不具合の指摘は正当なクレームですが、理不尽な謝罪要求や暴言はカスハラに該当します。
ポイント
カスタマーハラスメントは、従業員だけの対応に任せるのではなく、企業として毅然と対応されることが大切です。自社だけの対応では難しい場合もあるので、弁護士など専門家へも相談できるような体制の整備をお勧めします。