年次有給休暇(年休)使用時の賃金に固定残業代は入るのか
Q 来月末に退職予定で、来月1か月間は年休消化をする予定にしています。現在、固定残業代として月に3万円(20時間分)支給されていますが来月分の給料は固定残業代が付かないのでしょうか。
A 就業規則等で「年休中は所定労働時間の賃金を支払う」と規定されており、残業時間数が的確に把握され固定残業代が時間外労働に対する割増賃金として、実際の時間外労働に対応して処理されているのであれば固定残業代を除いた賃金が支払われる可能性があると思われます。固定残業代の支給と年休中の賃金計算方法についてご自分の労働条件通知書や会社の就業規則等で確認をしてみて下さい。
固定残業代とは、「定額残業代」「〇〇手当」などの名称にかかわらず一定時間分の時間外労働、休日労働および深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金のことです。固定残業代を賃金に含める場合には「固定残業代を除いた基本給の額」「固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法」「固定残業時間を超える時間外労働、休日及び深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨」すべてを明確にして就業規則や労働条件通知書に記載しないといけません。その上で会社が労働者の残業時間数を的確に把握し正確に管理できているのであれば、固定残業代は時間外割増賃金の性格を有していると言えます。
年次有給休暇の賃金については、下記のいずれかを支払わなければなりません。また残業代を含めるか否かについてそれぞれ以下の違いがあります。
①平均賃金(Q いろいろな賃金の違い参照)・・・固定残業代を含めた総額で計算する
②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金・・・所定労働時間外の労働に対して支払われる賃金等は算入されない
③健康保険の標準報酬月額の30分の1に相当する金額・・・固定残業代を含めた額で決定する
①、②とする場合は就業規則等での規定、③とする場合には過半数労働組合(無い場合は労働者の過半数代表者)との書面による協定が必要です。年休中賃金の計算方法について会社の就業規則等で確認してみてください。
年休中の賃金が上記②「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」であり、固定残業代が時間外割増賃金の性格を有していると確認できる場合、年休中の賃金に固定残業代を含まない事としても問題ありません。その場合、就業規則等で「1カ月に1日も出勤しなかった場合には固定残業代は支給しない」旨の規定があるかもしれないので確認をしてみて下さい。
一方で、固定残業代について具体的な規定も無く残業時間についての把握や管理もされず実際の残業時間数にも関係なく固定残業代が支払われている場合には、固定給の一部と考えられるため固定残業代も含んで支給される必要があります。
ご自分の労働条件通知書や会社の就業規則等で固定残業代や年休中の賃金についてどのように記載されているかを確認してみましょう。