労働相談Q&A(全) Feed

2024年2月28日 (水)

短期アルバイトの社会保険加入

Q 1カ月の短期アルバイトをすることになり労働条件通知書を貰ったら、雇用保険だけではなく社会保険にも加入と記載されていました。2カ月以内の契約であれば、社会保険に加入しなくても良いはずですがどうなのでしょうか。その場合、社会保険料はいくら引かれるのでしょうか。


A 令和4年10月以降は、雇用期間が2カ月以内であっても要件に該当すれば社会保険に加入するようになりました。


以前は雇用期間が2カ月以内であれば社会保険の適用除外でしたが、令和4年10月以降は当初の雇用期間が2カ月以内であっても以下のいずれかに該当する方は雇用期間の当初から社会保険の加入となります。

①就業規則、雇用契約書等において、その契約が「更新される旨」または「更新される場合がある旨」が明示されている場合
②同一事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されているものが、更新等により最初の雇用契約の期間を超えて雇用された実績がある場合

労働条件通知書の契約期間欄を確認し、「自動的に更新する」「更新する場合があり得る」にチェックがある場合は雇用期間の当初から加入となります。ご相談者の場合、1カ月の雇用ですが労働条件通知書に「社会保険加入」と記載されているのであればこの要件に該当している可能性がありますので、再度労働条件通知書を確認してみてください。

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仮に「契約の更新はしない」にチェックがついていれば、1カ月のみの契約なので社会保険加入は出来ませんが、所定の期間を超え引き続き使用されるに至った場合は、その日から加入となります。

社会保険に加入することにより、健康保険料、介護保険料(40~64歳)、厚生年金保険料が発生します。毎月の給与額(通勤手当などの各種手当を含む)を区切りのよい幅で区分した標準報酬月額をもとに保険料を決定します。

例)鳥取県在住(年齢40歳) 
基本給88,000円、通勤手当2,000円 合計90,000円⇒保険料額表により標準報酬月額は88,000円になります。

社会保険

料率

社会保険料 (円)

労働者負担分 (円)

健康保険料率

9.68%

8,518.4

4,259.2

介護保険料率

1.82%

1,408

704

厚生年金保険料率

18.300%

16,104

8,052

29.94

26,030.4

13,015.2

※保険料率は、令和6年3月分(4月から9月納付分)からのものです。


社会保険に加入すると、保険料負担が発生しますが将来もらえる年金額が増えるという大きなメリットがあります。

参考)年金額シミュレーション(厚生労働省 社会保険適用拡大ガイドブックより)
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他にも年金や医療保険の面で今より手厚い保障を受けられるメリットがあります。

社会保険に加入するメリットや短時間労働者の社会保険加入要件などについてはこちらのページを参考にして下さい。
パートの社会保険加入の拡大

パートの社会保険加入の拡大

Q 私はパートで週20時間働いており、雇用保険には入っていましたが、社会保険(厚生年金と健康保険)には加入していませんでした。先日会社から、社会保険に入るよう言われましたが、主人の扶養の範囲内で働きたいのですが入らないといけないのでしょうか?


A 社会保険の被保険者の要件が拡大され、その要件を満たす労働者は加入しなければなりません。どのような働き方をすればいいのか、家族でよく考えて労働契約を結びましょう。


原則は、勤務時間・勤務日数が常勤雇用者の4分の3以上働く方が社会保険(厚生年金保険と健康保険)の加入対象ですが、従業員101人以上の企業又は100人以下の企業でも労使合意に基づき、下記の要件を満たす方にも対象が拡大されました(2024年10月からは51人以上の企業が対象)。

 
【短時間労働者(4分の3未満)加入要件】
以下の項目すべてに該当する方は、加入することになります。

① 週の所定労働時間が20時間以上であること(残業時間は含めない)
② 雇用期間が2か月以上見込まれること(更新の可能性がある方を含む)
③ 所定内賃金の月額が88,000円以上であること(通勤手当、残業代、賞与などは含めない)不明な場合は「時間給×1週間あたりの所定労働時間×52週÷12か月」で計算
④ 学生でないこと(ただし夜間、定時制の方は対象)
⑤ 従業員数(社会保険の対象となっている従業員数)が常時101人以上の企業又は100以下の場合は労使で合意が出来ていること。
⑥ 現在75歳未満であること(厚生年金は70歳未満の方)

【社会保険に加入するメリット
 ・将来もらえる年金が増える
 ・障害がある状態になった場合などに障害年金がもらえる
 ・私傷病や出産で休んでも、傷病手当金や出産手当金がもらえる
 ・会社も労働者とほぼ同額の保険料を負担する

社会保険に加入すると、保険料の負担が増えますが、これまでより手厚い保障を受けることができます。

【その他気をつけるポイント】

〇 年収130万円未満であっても、上の加入要件に当てはまる方は、社会保険の被扶養者とはならず、自身で社会保険に加入することになります。
〇 配偶者が勤務する会社から支給される扶養手当(家族手当等)の支給要件については、各会社によって違いますので、その会社にお問い合わせください。

社会保険の適用関係図5_2


【被保険者の取扱いに係る留意事項】

短時間労働者(4分の3未満)の標準報酬月額の算定に係る支払基礎日数の取扱い

短時間労働者の算定基礎届・月額変更届等における支払基礎日数は、
各月11日以上の勤務日数があるかどうかで判断します。

【もし新たに社会保険に加入する場合】

〇 厚生年金保険と健康保険の加入手続きは勤め先の会社が行いますが、現在、配偶者の健康保険の被扶養者の方は、資格喪失届を配偶者の会社を通じて行う必要がありますので、その旨を配偶者の会社に申し出て下さい。
〇 現在、国民健康保険に加入している方は、国民健康保険の資格喪失の届出を自分で行う必要があります。詳しくはお住まいの市町村にお尋ねください。


なお、この社会保険の加入基準を守らない事業主には、懲役刑または罰金刑とする罰則規定が適用されますのでご注意ください。

2024年2月 2日 (金)

労働条件通知書を受け取るタイミングと記載内容

Q 入社が決まりましたが、労働条件通知書はいつもらうのですか?
また、2024年4月から『労働条件通知書』の記載内容が変わると聞きましたが、どう変わりますか?


A 『労働条件通知書』は、労働条件を企業から労働者に明示する書面で、書面をもらうタイミングは、お互いが合意した時点、つまり労働契約が成立したとき(採用内定~入社)になります。

法改正により、2024年4月から、労働条件通知書の明示事項について新たに

  • 就業場所・業務の変更の範囲
  • 更新上限の書面明示と更新上限を新設・短縮する場合の説明
  • 無期転換に関する事項

を追加して明示しなければなりません。


【労働条件通知書を受け取るタイミング】

 労働基準法第15条及び同法施行規則は、労働契約を締結する際、労働条件について書面等で交付するよう義務付けており、労働契約が成立した時から入社までの間に交付する必要があります(口頭でも労働契約は成立します)。

1_2 労働者は労働条件通知書の交付をうけることによって、労働条件を確認して安心して働くことができるともに、労使間のトラブルを未然に防止することができます。また、実際の労働条件と労働条件通知書の記載内容が異なる場合は、労働者側から労働契約を即時解除することもできます。労働条件通知書の交付は法律上定められた義務です。交付されない場合は法違反となり、罰則の対象となります。

なお、労働条件通知書と労働契約書を合わせて「労働条件通知書兼雇用契約書」として交付している企業もあります。


【労働条件通知書の明示事項の追加(2024年4月1日~)】

①就業場所・業務の「変更の範囲」の明示

全ての労働契約の締結時と有期労働契約の更新時のタイミングごとに「雇入れ直後」の就業場所・業務の内容に加え、将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の内容の「変更の範囲」を明示しなければなりません。(2024年4月1日以降に契約締結・契約更新をする労働者が対象)

②更新上限の書面明示と更新上限を新設・短縮する場合の説明

有期労働契約の契約締結時と更新のタイミングごとに、更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)がある場合には、その内容の明示が必要です。

また、更新上限を新たに設けようとする場合や更新上限を短縮しようとする場合は、あらかじめ労働者に説明することが必要になります。

③無期転換に関する事項

有期契約労働者に対して、「無期転換申込権」が発生する契約更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)を書面により明示しなければなりません(該当者には契約の都度、無期転換申込機会の明示が必要です)。その場合、無期転換後の労働条件を書面で明示することが必要です。

募集時等に明示すべき労働条件も追加
労働者の募集を行う場合にも、求職者に対して労働条件の明示が必要ですが、2024年4月1日からは、①就業場所の変更の範囲、②従事すべき業務の変更の範囲、③有期雇用契約を更新する場合の基準(通算契約期間または更新回数の上限を含む)の明示も必要となります。

労働条件通知書に明示しなければならない事項

定めをした場合に明示しなければならない事項

①労働契約の期間(通算契約期間が5年を超える有期労働契約の場合は無期転換申込権の明示)改正
②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準(更新上限の有無と内容)改正
③就業の場所及び従事すべき業務内容(将来、就業場所・従事すべき業務の変更の範囲も明示)改正
④業務の始業及び終業の時刻、休憩時間、休日等 ⑤賃金、昇給に関する事項
⑥退職に関する事項

⑦退職手当に関する事項
⑧臨時に支払われる賃金・賞与最低賃金額に関する事項
⑨労働者に負担させる食費・作業用品その他に関する事項
⑩安全及び衛生に関する事項
⑪職業訓練に関する事項
⑫災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
⑬表彰及び制裁に関する事項
⑭休職に関する事項

なお、就業規則がある場合は、労働条件通知書に「就業規則を確認できる場所や方法を明示すること」が追加となりました。

労働条件通知書の記載例


 ~労働条件通知書の電子化も~

 労働者が希望した場合は、労働条件通知書をFAXやメール、SNS等で明示できます。ただし、書面として出力できるものに限られます。 


2023年12月22日 (金)

外国人雇用の注意点

Q 人手不足の為、外国人雇用を検討していますが注意点を教えてください。


A 外国人を雇用する際は、日本人と同様に法令を守り、労働条件・保険・税金も日本人採用者と同じ扱いにする必要があります。また、日本人にはない在留資格のルールも守らなければなりません。在留資格によっては就労範囲の限定や就労が禁止されている場合があるので注意が必要です。


労働基準法は労働条件について、外国人に差別的取扱をすることを禁じています。
賃金、労働時間、休日、他の労働条件や健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険などの社会保険、所得税・住民税も原則、日本人と同様の取扱になります。

 また入管法で就労が認められている在留資格には芸術・医療・研究・技能実習などがあり、それぞれの資格で認められている活動以外は出来ません。在留資格を確認することが必要です。

もし認められていない活動内容で就労させた場合、不法就労助長罪により使用者が処罰されたり(3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金)外国人が強制送還されることもありますので注意が必要です。(永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者については国内活動に制限はありません)

 特に外国人の学生で日本大学、専修学校、高校、各種学校等において教育を受ける場合、在留資格は「留学」であり就労は認められていません。そこでアルバイト(資格外活動)をする際は「資格外活動」の許可を受ける必要があります。この許可を受けることにより1週28時間以内で公序良俗に反しない業務に就労可能になります。雇う場合は、資格外活動の許可をもっているか確認が必要です。

 外国人を雇用した場合、労働施策総合推進法に基づき労働者の氏名や在留資格等をハローワークへ届けなければなりません。雇用保険被保険者に該当する場合は雇用保険資格取得届により、被保険者に該当しない場合は外国人雇用状況届出書により提出します。


参照 外国人雇用のルールに関するパンフレット(厚生労働省)

2023年11月14日 (火)

いろいろな賃金の違い

Q 最低賃金と平均賃金、割増賃金とはそれぞれ何が違うのですか。


A 最低賃金とは、賃金の最低基準でありすべての労働者に適用されます。平均賃金とは、休業手当や解雇予告手当、減給の制裁の限度額などを算出する場合に使われます。割増賃金とは、残業(時間外労働)深夜労働、休日労働をした際に、労働者に対して一定割合を増額して支払う賃金のことです。それぞれ使用される場面や計算方法に違いがあります。


【最低賃金】
年齢に関係なく、正社員やパート、アルバイトなどを含めたすべての労働者の1時間当たりの賃金は最低賃金以上でなければいけません(一部例外あり)。それを下回る場合は、その契約は無効となり法律の基準まで引きあげられます。

最低賃金は都道府県ごとに異なり、毎年10月頃に改定されます。


月給制の場合・・・月によって所定労働時間数が異なるとき

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(*1)諸手当から除外するもの
  ・臨時に支払われる賃金(結婚手当など)  
  ・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)  
  ・割増賃金(時間外労働、休日労働及、深夜労働)                
  ・精皆勤手当、通勤手当、家族手当


【平均賃金】
休業手当等を算定する基礎となるものです。原則、算定すべき事由が発生した日以前3カ月間の賃金をその期間の総日数で割った金額です。(賃金締切日がある場合は直前の賃金締切日から起算)

3(*2)賃金総額から除外するもの
  ・臨時に支払われる賃金(結婚手当など)     
  ・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  ・産前産後の休業期間など算定期間から除かれる期間中に支払われた賃金

(*3)算定期間から除外するもの
  ・業務上の負傷・疾病による療養のための休業期間
  ・産前産後の休業期間
  ・使用者の責に帰すべき事由による休業期間
  ・育児・介護休業期間
  ・試用期間


【割増賃金】
法定労働時間を超えた労働、深夜(午後10時~午前5時までの)労働、休日(週1日または4週4日の法定休日の)労働をさせた場合、通常の賃金を一定以上割り増した割増賃金を支払わなければなりません。

     割増賃金=1時間あたりの基礎賃金×対象の労働時間×各種割増率

月給制の場合・・・月によって所定労働時間数が異なるとき
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(*4)諸手当から除外するもの(労働の対価として払われるもの以外を除外するという考え方) 
  ・家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当
  ・臨時に支払われる賃金(結婚手当など)     
  ・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など) 


最低賃金は、労働者が受けとる賃金の最低の基準を定めたものであり、その基準以上の労働契約でなければなりません。

平均賃金は、事業主の都合で休業する時や突然解雇されてしまった時、業務上の負傷や疾病による休業時やペナルティーにより減給される時、それにより突然収入が絶たれてしまうことを防ぎ、労働者の生活を保障するための休業手当や解雇予告手当、災害補償や減給の限度額の基準として利用されます。

割増賃金は、法定以上の労働時間数や労働時間帯に応じ、法令で定める割増率以上の率で算定した割増賃金を支払うものです。1日における時間外・休日・深夜労働の各時間に端数(1時間未満の時間)が生じても、1分単位の時間を切り捨てることはできません。ただし、1カ月ごとの時間外労働の合計について30分未満を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げる端数処理をして割増賃金を計算することは認められています。

時給900円のアルバイトで深夜に働いても割増はないの?

Q コンビニで午後7時から深夜2時までの間(休憩1時間)、時給900円の契約でアルバイトをしています。店長から「深夜に働いても労働契約の時給900円だ。最低賃金と同額だから問題ない。」と言われました。人手が足りないときは朝までバイトに入るのに、給料は時給900円でしか計算されません。深夜に働いても割増はないのでしょうか。


A 賃金額は、労使間の労働契約によって自由に決められますが、最低賃金を下回る労働契約は無効です。また、深夜労働(午後10時から午前5時までの時間帯)や法定労働時間を超えた時間外労働には割増賃金が支払われなければなりません。今までの深夜労働と時間外労働に対する差額分を請求(時効3年間)し、今後の適正な深夜割増賃金を会社に求めましょう。


使用者は、正社員やアルバイト、パートなどの雇用形態に関係なく、労働者に時間外労働、休⽇労働、深夜労働を行わせた場合は、法令で定める割増率以上の率で算定した割増賃⾦を⽀払わなければなりません。(労働基準法第37条)





時間外労働

2割5分以上
(1か⽉60時間を超える場合は5割以上)

休日労働

3割5分以上

深夜労働

2割5分以上

 

割増賃金は、次のように計算します。

1_2

 労働時間が深夜時間帯(午後10時から午前5時まで)の場合、割増賃金率は2割5分以上となるため、労働契約の時給単価に割増賃金率が掛けられた賃金が支払われなければ最低賃金を下回ることになります。また、実際の労働時間が1日の法定労働時間(8時間)を超えた場合は、時間外労働の割増賃金率が掛けられた賃金が支払われることになります。

 (例)午後7時から翌朝6時まで働いた場合(休憩時間:午後11時~12時までの1時間)

①午後7時から午後10時まで(割増無し)
        900円×3時間=2,700円

②午後10時から午前4時まで(深夜割増0.25)休憩1時間のため5時間勤務
        900円×5時間×1.25=5,625円

③午前4時から午前5時まで(深夜割増0.25+時間外割増0.25(8時間を超えるため))
        900円×1時間×1.5=1,350円

④午前5時から午前6時まで(時間外割増0.25)
        900円×1時間×1.25=1,125円

            合計 10,800円 が支払われます。


労働契約によって時給が定められている場合、労働時間帯等に応じた割増額が支払われなければなりません。

ただし、深夜労働のみを行う場合の労働契約では、賃金額に割増率を掛ける方法以外に、契約賃金自体に深夜割増を含めた金額を設定することが可能です。その場合は、賃金額に法定の割増賃金相当分が含まれることが明確、かつ、労働者との間でその旨の合意がされていることが必要です。深夜割増を含めた賃金が用いられる時は、別に深夜労働の割増賃金は払われる必要はないとされていますので、ご自身の契約内容を面接・採用時の説明、労働条件通知書、労働協約、就業規則等で確認しましょう。

2023年10月24日 (火)

ストレスチェック実施後の対応

Q 仕事がかなりハードなのですが、毎年職場で行うストレスチェックでは、『特に問題はありません』という結果です。このまま放っておいてもいいのでしょうか?


A ストレスチェックで『問題なし』という結果であっても、「最近眠れていない」とか「気分の落ち込みが激しい」などの自覚症状があれば、産業医やカウンセラーに相談したり、かかりつけの医療機関を受診しましょう。


ストレスチェックとは、労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査で、常時50人以上の労働者を使用する事業者は、年に1回、医師,保健師等によるストレスチェックの実施が義務付けられています(50人未満の事業場については当分の間、努力義務)。

ストレスチェックの結果で“ストレス度が高い”とされた労働者(高ストレス者)は、本人の申し出により医師による面接指導を受けることができます。医師は面接指導結果を踏まえ、必要に応じて就業上の措置を実施するよう事業者に勧告することができます。

高ストレス者と判定されなくても、疲労の蓄積が見られたり、体調がすぐれない時は、産業医やカウンセラーに相談しましょう。ストレスの負荷がかかるタイミングは、人それぞれです。たまたまストレスチェックを実施した時はストレスの負荷がかかっていなかっただけかもしれません。遠慮せず相談しましょう。

また、産業医の選任義務のない50人未満の小規模事業場で、ストレスチェックに係る高ストレス者や長時間労働者に対する医師による面接指導を実施したい場合は、最寄りの地域産業保健センターを活用することができます。利用に際しては、事業場の担当者を通じて事前に申込む必要がありますので、まずは事業場の担当者にご相談しましょう。

50人未満の事業場の労働者や、会社が実施するストレスチェック以外の時期でもご自身の都合のいい時にストレスチェックができます。
【厚生労働省のポータルサイト】
働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」
こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト (mhlw.go.jp)


職場におけるストレスの負荷がかかりやすい時期(例)

・職場内での上司・部下関係、お客様や利用者との人間関係のトラブルがあった時

・昇進や昇格、配置転換など、役割・地位が変化した時

・長時間労働や人事異動、急なトラブルが発生したなど、仕事の質や量が変化した時

・仕事上の事故や失敗などの重い責任が発生した時

 

ストレス要因による健康障害(例)

【身体的な変化】

・睡眠の変化(眠れない、寝つきが悪い、朝早く目が覚めてしまう等)

・だるい、疲れやすい

・食欲が低下、食べたくない、味が分からない、嘔吐する

・頭痛、胃痛、高血圧ぎみ、動悸がする、めまい、下痢や便秘ぎみ  など

【心理的な変化】

 ・やる気がでない(意欲・活力の低下)

 ・気分が沈んでしまう(うつ、自然と涙がでる、不安が強くなる、抑うつ感)

 ・イライラ感

【行動的な変化】

 ・お酒やたばこの摂取量が増える又は減る

 ・食事の量が増える又は減る

 ・仕事の能率が落ちる

 ・遅刻や早退、有休が増える(急な休みの連絡) など


 flairポイント!
ストレスに早く気づき、こまめにストレスを解消して、ため込まないようにしましょう。そのためにも、ストレスチェックを定期的に実施して、こころと身体の健康管理を自ら行い、ストレスと上手に付き合っていきましょう。

自分でどうにもならない時は、産業医やカウンセラーなど専門家を頼りましょう。

2023年9月21日 (木)

扶養とダブルワークの注意点

Q 現在、パートで配偶者の社会保険の扶養に入っています。子供に手がかからなくなりダブルワークを考えていますが収入が増えるとどんなことがありますか。


A 収入が増えると、配偶者の社会保険の扶養から外れたり、税金が控除されたり、会社によっては配偶者の会社から支給されている家族手当がもらえなくなることがあります。


ダブルワークをして年収が130万円を超えると、配偶者の社会保険の扶養から外れます。また、新しい会社で下の要件を満たせばご自身が社会保険の加入対象となります。社会保険に加入すると社会保険料(約14%)や住民税、所得税が控除される場合があります。

 ■社会保険の加入要件:全て満たす必要がある

  1. 週の労働時間が20時間以上
  2. 月給88,000円(年収約106万円)以上
  3. 2か月以上継続して雇われている、または雇われる見込みがある
  4. 学生以外
  5. 従業員が101人以上(2024年10月から51人)

 

■年収130万円の壁

新しい会社での働き方や会社の規模が加入要件を全て満たさなければ社会保険には入れません。しかし、ダブルワークで合算した年収が130万円以上になれば配偶者の社会保険の扶養から外れるため、自分自身で「国民健康保険」「国民年金」に加入する必要があります。

「健康保険」「厚生年金」に加入すると保険料は会社と加入者本人とで折半ですが、「国民健康保険」「国民年金」の保険料は全額自己負担となります。

★社会保険に加入するメリット
・保険料が会社と折半。
・将来もらえる年金額が増える。
・ケガや病気で仕事を長期間休むことになったときには「傷病手当金」が給付される。
・出産のために仕事を休んだときには「出産手当金」が給付される。

「傷病手当金」や「出産手当金」の支給額は、休む前に支給されていた給与の約2/3ほどですが、働けない時にも収入があるのはとても助かるのではないでしょうか。

 
■会社の家族手当(扶養手当)

社会保険、所得税の扶養以外にも、会社によって家族手当の支給対象となる配偶者の収入基準を設けている場合があります。会社の規定を確認しましょう。


 flairポイント!

扶養から外れ社会保険に加入することは、将来的に年金額が増えたり、病気で仕事を休むことになっても給付金があったりとメリットがたくさんありますが、保険料や税金の負担も生じる場合があります。家族でどんな働き方がいいのかよく話し合いましょう。

2023年8月31日 (木)

最低賃金はどうやって決定されるのか

Q 毎年ニュースで耳にする都道府県別の最低賃金は誰がどうやって決定しているのですか。


A 公益代表、労働者代表、使用者代表の各同数の委員で構成される最低賃金審議会において議論の上、都道府県労働局長が決定します。

最低賃金審議会・・・中央最低賃金審議会(厚生労働省に設置)と地方最低賃金審議会(都道府県労働局に設置)があり、いずれも労働者を代表する委員、使用者を代表する委員及び公益を代表する委員の3者で構成されており、最低賃金に関する重要事項を調査審議する。


地域別最低賃金は、

①労働者の生計費(生活保護に係る施策との整合性に配慮するもの)  
②労働者の賃金 
③通常の事業の賃金支払能力

について考慮して定めるものとされています。(最低賃金法第9条)

また、賃金実態についての調査結果や各種統計資料、中央最低賃金審議会から示される目安なども考慮して審議を行っています。

 これらを基に、地方最低賃金審議会から都道府県労働局長に対して答申(意見)が行われると、その答申に対する異議申出を受け付け、改めて地方最低賃金審議会の意見を聴き、そのうえで都道府県労働局長が決定をします。

1_2


flairポイント!
・都道府県労働局長は、異議申出があった場合改めて地方最低賃金審議会の意見を聴いて、地域別最低賃金の改正を決定し、効力発生日である発行日が決定します。
・発行日以降は、改正後の最低賃金以上の賃金を支払う必要があります。

 

2023年7月26日 (水)

フレックスタイム制の労働時間

Q 労働者からフレックスタイム制を求められ導入を考えていますが、制度や基本的なことが知りたいです。


A フレックスタイム制とは、3カ月以内の一定期間(清算期間という)の総労働時間を定めておき労働者がその範囲内において、労働者が自ら仕事の始業、就業、労働時間を決めて働く制度のことです。(労働基準法第32条の3に基づいた労働時間の管理方法) 労働者は仕事と生活の調和を図りながら効率的に働くことができます。


フレックスタイム制度を導入する場合

就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねることを規定することとなっています。

 労使協定において対象となる労働者の範囲、清算期間、清算期間中の総労働時間、標準となる1日の労働時間、協定の有効期間(通算期間が1か月を超える場合)などを定める必要があります。

 総労働時間の「コアタイム」と「フレキシブルタイム」については、労使協定で定め(労使間での話し合いで定めた事項のこと)労働者はそれに従い、その総労働時間の範囲の中で自身の裁量のもと働くことになっています。3_3

※フレックス制を採用した場合、清算期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間(特例措置対象事業場で清算期間が1か月以内の制度を採用する場合は44時間)を超えてはなりません。


清算期間が1か月を超える場合

 清算期間が1か月を超え3か月以内の制度による場合は、当該清算期間を1か月ごとに区分した各期間(最後に1か月未満の期間を生じたときには、当該期間)ごとに当該各期間を平均し1週間当たりの労働時間が50時間を超えない範囲内で労働させなければなりません。
 また、1週間あたり50時間を超えて労働させた場合は、その超えた時間について、当該月における割増賃金の支払いが必要になります。


『コアタイム』とは

労働者が1日のうちで必ず働かなくてはならない時間帯のこと。

コアタイムは必ず設けなければならないものではなく、設ける日と設けない日が曜日で違ったり、日によって時間帯が異なるなどを協定で定めます。

 『フレキシブルタイム』 とは

労働者が自らの自由選択によって労働時間を決定することができる時間帯のこと。

フレキシブルタイムも必ず設けなければならないものではなく、設ける場合には時間帯について、開始や終了時間などを協定で定めます。


flairポイント!
・コアタイムの時間がこれまでの労働時間とあまり変わらない、またはフレキシブルタイムの時間帯が極端に短く、労働者が自由に定めることができないなどの場合は、フレックスタイム制の趣旨と違ってきますので設定をよく検討しましょう。

・実質的に出勤日も労働者が自由に決められることとする場合においても、法定休日などは、あらかじめ定めておく必要があります。