労働相談Q&A(全) Feed

2023年7月26日 (水)

フレックスタイム制の労働時間

Q 労働者からフレックスタイム制を求められ導入を考えていますが、制度や基本的なことが知りたいです。


A フレックスタイム制とは、3カ月以内の一定期間(清算期間という)の総労働時間を定めておき労働者がその範囲内において、労働者が自ら仕事の始業、就業、労働時間を決めて働く制度のことです。(労働基準法第32条の3に基づいた労働時間の管理方法) 労働者は仕事と生活の調和を図りながら効率的に働くことができます。


フレックスタイム制度を導入する場合

就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねることを規定することとなっています。

 労使協定において対象となる労働者の範囲、清算期間、清算期間中の総労働時間、標準となる1日の労働時間、協定の有効期間(通算期間が1か月を超える場合)などを定める必要があります。

 総労働時間の「コアタイム」と「フレキシブルタイム」については、労使協定で定め(労使間での話し合いで定めた事項のこと)労働者はそれに従い、その総労働時間の範囲の中で自身の裁量のもと働くことになっています。3_3

※フレックス制を採用した場合、清算期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間(特例措置対象事業場で清算期間が1か月以内の制度を採用する場合は44時間)を超えてはなりません。


清算期間が1か月を超える場合

 清算期間が1か月を超え3か月以内の制度による場合は、当該清算期間を1か月ごとに区分した各期間(最後に1か月未満の期間を生じたときには、当該期間)ごとに当該各期間を平均し1週間当たりの労働時間が50時間を超えない範囲内で労働させなければなりません。
 また、1週間あたり50時間を超えて労働させた場合は、その超えた時間について、当該月における割増賃金の支払いが必要になります。


『コアタイム』とは

労働者が1日のうちで必ず働かなくてはならない時間帯のこと。

コアタイムは必ず設けなければならないものではなく、設ける日と設けない日が曜日で違ったり、日によって時間帯が異なるなどを協定で定めます。

 『フレキシブルタイム』 とは

労働者が自らの自由選択によって労働時間を決定することができる時間帯のこと。

フレキシブルタイムも必ず設けなければならないものではなく、設ける場合には時間帯について、開始や終了時間などを協定で定めます。


flairポイント!
・コアタイムの時間がこれまでの労働時間とあまり変わらない、またはフレキシブルタイムの時間帯が極端に短く、労働者が自由に定めることができないなどの場合は、フレックスタイム制の趣旨と違ってきますので設定をよく検討しましょう。

・実質的に出勤日も労働者が自由に決められることとする場合においても、法定休日などは、あらかじめ定めておく必要があります。

2023年6月21日 (水)

高齢者雇用における労災防止

Q 今後は高齢者も積極的に雇用していきたいと思っているが、労働災害防止への取り組みで参考になるものがありますか。


A 厚生労働省では令和2年に、高年齢労働者が安心・安全に働く環境づくりや労働災害防止のための健康づくりを推進するため、「エイジフレンドリーガイドライン」(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)が作成されています。ガイドラインを活用し、働く高齢者の特性に配慮したエイジフレンドリーな職場を目指しましょう。


働く高年齢労働者が増加傾向にあり、厚生労働省などによると令和3年の労働者全体に占める60歳以上の割合は18.2%
「休業4日以上の死傷者数の占める60歳以上の労働者の割合は25.7%という高さです。中でも転倒、墜落・転落災害による労災発生率が高いとされています。

 ※ガイドラインでは、事業者と労働者両方に求められる取り組みが具体的に示されています。
高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(厚生労働省)


【事業者に求められる取り組み】

・安全衛生管理体制の確立
・職場環境の改善
・高年齢労働者の健康や体力の状況の把握
・高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応
・安全衛生教育      など

 

【労働者に求められる取り組み】

事業者が実施する取り組みに協力するとともに、自己の健康を守るための努力の重要性を理解し、自らの健康づくりに積極的に取り組む必要があります。自らの身体機能の変化が労働災害リスクにつながり得ることを理解し進めてください。

・健康や体力の維持管理 
・法定定期健康診断の受診 
・食習慣や生活習慣の改善 など       

 

高齢者は身体機能が低下すること等により、若年者に比べ労働災害の発生率が高く、休業も長期化しやすくなります。体力に自信がない人や仕事に慣れていない人も含め、すべての働く人の労働災害防止を図るためにも職場環境改善が重要です。以下のような支援を活用して、高齢者の特性に配慮した職場づくりを行ってください。

【国・関係団体等による支援の活用】

・中小企業や第三次産業における高年齢労働者の労働災害防止対策の取組事例の活用
・個別事業場に対するコンサルティング等の活用
・エイジフレンドリー補助金等の活用
・社会的評価を高める仕組みの活用(安全衛生優良企業公表制度、あんぜんプロジェクト等)
・職域保健と地域保健の連携及び健康保険の保険者との連携の仕組みの活用


flairポイント!
・事業主と労働者がそれぞれの役割を理解し、連携して取り組みを進めることが重要です。
・高齢者になると能力、体力など個人差があるのでご自身の変化に気づき労働災害のリスクを減らしましょう!

 

2023年5月26日 (金)

育児休業明けの有給休暇

Q 出産後、子どもが1歳になるまで育児休業を取得し復職しました。子どもの発熱のために会社を休もうとしたら、上司に「育児休業で散々休んだだろ。出勤率が足りないから有給休暇なんてない。」と言われました。本当に有給休暇はないのでしょうか。


A 有給休暇は、付与された日(基準日)前1年間に、全労働日の8割以上出勤していれば付与されますが、8割に満たない場合は付与されません。その際、育児休業や産前産後休暇は出勤したとみなして計算されます。また、勤務年数も通算されるため、休業期間中に基準日があったとしても条件を満たせば有給休暇は付与されます。更に、小学校就学前の子どもを看護するための休暇であれば、年5日の「子の看護休暇」が取得できます。子の看護休暇は法律で有給とは定められていないため、給与の有無を会社の就業規則で確認しましょう。


年次有給休暇は、従業員が雇い入れ日から6ヶ月間継続勤務し、その出勤率8割以上の場合に付与されます。それ以後は、出勤率を満たせば継続勤務年数1年ごとに一定日数を加算した日数が付与されます。

出勤率の計算は、「出勤した日÷全労働日(その期間の所定労働日数)×100」により算出されます。育児休業等は、実際に労働していなくとも「出勤したとみなす」とされているため、出勤した日、全労働日どちらにも含められます。

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基準日に付与された有給休暇は、労働の義務を免除されている育児休業期間中等に取得することはできません。また、子の看護休暇や介護休暇は「出勤したとみなす」の対象とされておらず、一般的には全労働日から除かれます。

2023年4月10日 (月)

高齢者の雇用における配慮やポイント

Q 人手不足があり、今後は高齢者も積極的に雇用していきたいと思っているが、どういうことに気を付けたらよいでしょうか。


A 法改正により、70歳までの就業を確保することが企業に求められています。働く意欲のある高齢者が活躍できるよう、健康状態への配慮や勤務形態等の整備を進めて、安全で健康な職場づくりに取り組んでいきましょう。また、社会保障制度や助成金などを上手に組み合わせて活用していくこともポイントです。


少子高齢化時代になり、高年齢の労働者が今後ますます増えていきます。企業も人手不足解消のため、働く意欲および能力ある高齢者に積極的に働いていただくことが必要です。そのためにも、高齢者が安心して働き続けられる就業環境を今から整えておくことが大切で、企業としては以下の点に注意や配慮をしましょう。

 (1)健康状態への配慮
 シニア層は、健康上の問題が起きやすくなります。筋力や体力の衰えから、ちょっとした段差に躓いたり転倒したり、腰痛が悪化したりする恐れがあります。また小さな文字が見えにくかったり、暗い階段や通路などで物が見えにくかったりといった視機能の衰えや、記憶力や判断力の衰えなども出てきます。労働災害防止の観点からも、ヒヤリハットや安全パトロールを行い、安全な職場づくりを積極的に行いましょう。

例)
・身体の負担軽減を考えて、短時間や隔日勤務等の働き方が選択できるようにする
・大きくて見やすい表示にしたり、危険を知らせる警告音を設置する
・床面は滑りにくく、凹凸をできるだけ排除する
・日頃から腰痛防止体操を取り入れ、予防に取り組む
・慣れや過去の経験、思い込みで作業しないよう、注意喚起を促す   等

 また、健康状態の変化に、本人や企業側が早く気づくことができるよう、毎朝の朝礼で体調面の自己チェックをするなど、健康面の自己申告がしやすいよう工夫しましょう。

(2)知識や経験などを活用できる仕事へ配置する配慮
 長年培ってきた知識や経験が、仕事で活かせないとモチベーションが下がってしまいます。その人の得意分野や資格が活かせるような仕事に配置しましょう。また、役職名などを工夫するのもよいでしょう。

例)
・教育係を担う場合「シニアアドバイザー」
・技術やノウハウの伝承を担う場合「マイスター」  等

(3)所得を工夫
 一般的に、定年後の賃金は、ピーク時の5~8割になると言われています。高齢者の生活の安定にも配慮した計画的かつ段階的な制度となるよう工夫しましょう。

例) 
・段階的に給与額を下げていく制度の導入
(定年後1年目は80%、2年目は75%、3年目は65% 等)
・月給制ではなく、時給換算する制度の導入
・賞与などの一時金を工夫
・社会保障制度(※)の活用による急激な所得低下の抑制       等

 (※)社会保障制度
老後の生活設計を手助けしてくれる社会保障制度には、厚生年金保険の在職老齢年金、雇用保険の高年齢雇用継続給付があります。

また、65歳以降の定年延長や継続雇用制度の導入を行う企業に対しての助成金制度もあります。

 
高年齢雇用継続給付
雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の被保険者が、65歳以降も引き続き雇用された場合又は再就職をした場合に、60歳以降の賃金が60歳時点の75%未満となったときに、支給対象月の賃金額の最高15%相当額が支給されます。

 

在職老齢年金
老齢期の年金が受け取れる年齢となった厚生年金保険の被保険者は、年金と給与が同時に受け取ることができます。ただし、年金と給与の合計額が一定の基準を超えたとき、年金の全部又は一部が支給停止され、これを在職老齢年金といいます。令和5年4月からの60歳以上の在職老齢年金の支給停止基準額は48万円です。

在職老齢年金を受けている人が、高年齢雇用継続給付を受けている間は、原則として標準報酬月額の6%相当額の年金が支給停止されます。

 参考 日本年金機構のHP「働きながら年金を受給する方へ」

 65歳超雇用推進助成金(令和5年度)
65歳以上への定年引上げ等や高齢者の雇用管理制度の整備等、高齢者の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換した事業主に対して支払う助成金です。詳しくは、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構へお問合せください。

 

2023年3月28日 (火)

70歳までの就業機会の確保

Q 現在、会社の定年は65歳ですが、スキルのある社員に長く働いてもらいたいので定年を70歳に引き上げようと思っています。70歳までの就業について何か法律で決まっていると聞いたのですが、どういう内容ですか。


A 65歳までの雇用確保(義務)に加えて、65歳から70歳までの就業機会を確保するための措置(努力義務)が追加されました。


高年齢者雇用安定法では「生涯現役社会の実現」を目指して「定年制の廃止」「定年の引上げ」「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置を65歳まで講じなければなりません。さらに令和3年4月1日からは、下記のいずれかの措置を講じるよう努める必要があります。(定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主、65歳までの継続雇用制度を導入している事業主が対象)

1.雇用による措置

  • 70歳までの定年引上げ
  • 定年制の廃止
  • 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入

2.雇用以外の措置(創業支援等措置)

  • 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  • 70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入

※社会貢献事業とは
不特定かつ多数の者の利益に資することを目的とした事業のこと。特定の事業が「社会貢献事業」に該当するかどうかは、事業の性質や内容等を勘案して個別に判断される。

上記2を実施する場合には、計画を作成し過半数労働組合等の同意を得たうえでその計画を労働者に周知する必要があります。

またその計画とは別に、上記1.2いずれにおいても措置を講じる場合には「退職に関する事項」に該当するので、就業規則の作成や変更をして所轄の労働基準監督署に届出る必要があります。


参考)70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況(令和4年6月時点)

  • 70歳までの就業確保措置を実施済みの企業は、9%(前年比2.3ポイント増)。
  • 継続雇用制度の導入を行うことで就業確保措置を講じている企業が最も多かった。

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厚生労働省「令和4年 高年齢者雇用状況等報告」より

2023年2月16日 (木)

月60時間超え残業の割増と代替休暇

Q 時間外労働の割増賃金率が50%になると聞いたのですが、本当ですか?


A 大企業では、2010年4月から月60時間を超える時間外労働分の割増賃金率が50%以上に引き上げられており、2023年4月1日からは中小企業も対象となります。また、50%以上に引き上げられた部分の割増賃金の代わりに代替休暇(有給)を付与することも可能です。この割増賃金と代替休暇、どちらを選ぶかは労働者の自由選択となっています。


2010年に施行された労働基準法の改正では、月60時間超の時間外労働の割増賃金率が50%以上に定められました。中小企業については当面適用が猶予措置とされていましたが023年4月1日以降は、企業規模を問わず全ての企業で月60時間超の時間外労働の割増率が50%以上となります。

労働基準法では、原則1日8時間 1週40時間(法定労働時間)を超えて労働した時間を、時間外労働(残業)といいます。

今回、中小企業も対象となる月60時間超えの時間外労働の算定には、法定労働時間を超えた時間に加えて、法定休日以外の休日(所定休日)の労働時間もカウントされます。

例) 土日が休みの週休二日制の会社で、日曜を法定休日とした場合、土曜は所定休日。土曜に労働したら、その時間が時間外労働としてカウントされます。
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出典:厚生労働省

【 代替休暇制度 】

月60時間超の法定時間外労働は、原則、引き上げ後の割増賃金率で算出した賃金を支払う必要がありますが、事業場で労使協定を締結すれば、健康確保の観点から引上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することが出来ます。

 代替休暇の労使協定の締結内容や、代替休暇の付与の仕方、換算方法などは、下記の厚生労働省のホームページを参考としてください。

改正労働基準法(厚生労働省)

2_2出典:厚生労働省


flairポイント!

・月60時間超の割増賃金率の引き上げと、これに伴う代替休暇制度の導入をおこなう場合、就業規則の改定や代替休暇の取得日の決定方法や割増賃金の支払い日等を労使協定で定めておく必要があります。中小企業は、2023年4月1日の施行に間に合うよう改定に向けて就業規則の見直しを行ってください。

・割増賃金でもらうのか代替休暇にするのかは、労働者の自由選択なので意向確認が必要です。




2023年1月11日 (水)

派遣労働者ってどういうこと?

Q 派遣の仕事で働こうと思うのですが、派遣の事があまり良く分かりません。いちばん気を付ける所とか何かありますか?


A 派遣での働き方とは、派遣元と雇用契約を結び、派遣先とは指揮命令関係にある働き方となります。派遣元は雇用主としての労働関係法の責任を負い、社会保険の加入も派遣元になります。また、正社員やアルバイトなどで直接雇用されていた会社では、離職後1年以内に派遣で働くことは出来ません。

他にも、派遣期間は3年が原則などいろいろ注意が必要ですので以下を参照してください。

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派遣で働くときには

  • 離職後1年以内の労働者を元の勤務先企業が派遣労働者として受け入れることは禁止されています(派遣法第40条の9第1項)。同じく派遣元も、就業先が離職後1年以内の企業とわかったときには労働者派遣を行ってはいけないとされている(派遣法第35条の5)ので注意してください。
  • 派遣元会社から労働条件通知書と就業条件明示書を交付してもらい契約期間の有無、賃金、昇給、退職手当、賞与、退職の事、派遣先の勤務地、仕事の内容、勤務時間、休日など確認しましょう。
  • 社会保険は、加入要件に該当していれば加入しないといけません。
  • 雇用契約の内容を超えて就業させることはできません。契約以上の内容を求められたら派遣元に連絡しましょう。
  • 同一労働同一賃金:「派遣先の正社員との均等・均衡待遇」または「派遣元の労使協定による一定水準を満たす待遇」のどちらかの方法による不合理な待遇差をなくすことが義務化されています。(労働者派遣法第30条の3、4)
  • 派遣でも、労働基準法、男女雇用均等法などの労働関係法令が適用されるので年次有給休暇や育児休業も要件を満たせば取得できます。
    • 年次有給休暇取得の要件:週所定労働日数、労働時間により6か月継続勤務し、かつ全労働日の8割以上出勤していること。
    • 育児休業取得の要件:子どもが1歳6か月になる前日までに労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと。
  • 産前産後休業の取得に規定はなく、申請する時点で働いていれば、誰でも取得することができます。
  • 派遣期間は原則3年(60才以上等は対象外)。
  • 紹介予定派遣は直接雇用が前提
    • 派遣先での直接雇用を前提に、まずは一定期間(6か月以内)「労働者派遣」で働き、派遣労働者と派遣先との希望が合致すれば、派遣期間終了後、派遣労働者が派遣先に直接雇用されることができる。

注意すること
紹介予定派遣以外では、派遣先になる会社と事前に面接をしたり、履歴書を送ってはいけません。


flairポイント!

  • 年次有給休暇や産前産後・育児休業届は派遣元に提出しましょう。
  • 年休、産休・育休取得は人材確保や労務の対応などがあるので早めに相談しましょう。
  • 労災・ハラスメント等トラブルが起こったら、派遣元と派遣先にそれぞれ相談窓口があります。早めに担当者に相談し問題解決してもらいましょう。

2022年12月15日 (木)

「産業医・産業保健機能」の強化

Q 働き方改革で「産業医・産業保健機能」を強化するとありましたが、どのように強化されたのでしょうか?


A 長時間労働やメンタルヘルス不調などにより、健康リスクが高い状況にある労働者を見逃さないために、産業医による面接指導や健康相談等「産業医・産業保健機能」の強化が求められます。

具体的には、事業者は従業員の健康管理を適切に行うために必要な情報を産業医に提供しなければならないことや、産業医による従業員の健康相談を充実するための体制整備ならびに、会社による従業員の健康情報の収集や保管、適正な管理などの規定を作る必要があります。


1)産業医の活動環境の整備
事業者は、長時間労働者の状況や労働者の業務状況など、産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報提供をしなければなりません。また事業者は、産業医から受けた勧告の内容や勧告を踏まえて講じた措置または講じようとする措置の内容を事業場の労使や産業医で構成する衛生委員会に報告しなければなりません。

2)労働者に対する健康相談の体制整備、労働者の健康情報の適正な取り扱いルールの推進
事業者は、産業医等が労働者からの健康相談に応じるための体制整備に努めなければなりません。また、事業者は労働者の健康情報の収集、保管、使用及び適正な管理について指針を定め、労働者が安心して健康相談や健康診断を受けられるようにしましょう。

 

産業医とは
従業員が健康で快適な作業環境のもと業務が行えるよう専門的な立場から指導や助言を行う医師のことです。
労働安全衛生法において常時50人以上の従業員を使用する事業場において事業者は産業医を選任しなければなりません。また、50人未満の事業場においては、産業医の選任義務はありませんが、従業員の健康管理を専門家に行わせるよう努めなければなりません。

 

「地域産業保健センターの活用」

 労働者数50人未満の小規模事業場の事業者とそこで働く労働者を対象に産業保健支援サービスを充実させることを目的として、地域産業保健センターが開設されています。

 [地域産業保健センターでの支援サービス内容] 

  1.健康診断の結果について医師からの意見聴取

  2.長時間労働者や高ストレス者に対する面接指導

  3.労働者のこころと身体の健康管理にかかわる相談

  4.専門スタッフによる個別訪問指導


 flairポイント!

産業医や地域産業保健センターを上手に活用して、従業員が安心して健康相談を受けられるような体制整備や健康情報の取り扱いのルールを定めましょう。

2022年12月 3日 (土)

パート・アルバイトの健康診断の実施について

Q 来月からアルバイトとして働くことになり、会社から健康診断を受けてくるように言われました。アルバイトでも健康診断を受けないといけないのでしょうか。また、費用負担は会社にしてもらえますか。


A 労働安全衛生法により、事業者には健康診断の実施が義務付けられているため、アルバイトであっても「“雇い入れ時”の健康診断の実施対象者」に該当する場合は、健康診断を受けなければなりません。(参考:厚労省健康診断チラシPDF)  

なお、すでに雇い入れ前3か月以内に医師による健康診断を受けていて検査項目が重複する場合は、その検査項目の実施は省略できるとされていますので、該当する健康診断の結果がある場合は会社に提出しましょう。

費用については、法律上、事業者に健康診断の実施が義務付けられているため、当然に事業者が負担すべきとされています。


 【健康診断の種類(抜粋)】

労働安全衛生法で、事業者に実施が義務付けられている主な健康診断と対象者は、次のとおりです。







健康診断の種類

実施対象となる労働者

実施時期

雇入時健康診断

常時使用する労働者

雇い入れ時

定期健康診断

常時使用する労働者

(特定業務従事者を除く)

1年に1回

特定業務従事者

健康診断

特定業務に常時

使用する労働者

特定業務配置時

及び6月以内に1回

 ※この他、有害業務に従事する労働者や海外派遣労働者を対象とした健康診断もあり、

それぞれ法令で定められています。

 【実施対象となる労働者について】

 パート等の短時間労働者 
 パート労働者等の短時間労働者が『常時使用する労働者』に該当するかどうかについては、次のとおりとされています。(平成19年10月1日基発第1001016号通達)

 常時使用する労働者とは、次の(1)(2)のどちらも満たす場合とされています。

(1)・期間の定めのない契約により使用される者

    ・有期契約の労働者は、1年以上の雇用予定がある者及び更新により1年以上雇用されている者

        ・特定業務従事者の雇入時健康診断は、6カ月以上の雇用予定があるか又は更新により6カ月以上雇用されている者

(2)週の労働時間数が、通常の労働者(同事業場内の同種業務に従事する者)の4分の3以上である者


実施が望ましいとされている労働者 
常時使用する労働者の要件の(1)のみに該当し、週の労働時間数が通常の労働者(同事業場内の同種業務に従事する者)の2分の1以上ある者は、実施が望ましいとされています。

 

派遣労働者(労働者派遣事業法に基づく者) 
派遣労働者の一般健康診断は、派遣元の事業場で実施し、有害業務従事労働者の健康診断は派遣先の事業場で実施することとなります。

 

【健康診断の費用】
労働安全衛生法で事業者に実施が義務付けられている健康診断の費用は、当然に事業者負担とすべきとされています。

 

【健康診断受診に要した時間の取り扱い】
定期健康診断は、特に所定労働時間内に実施する義務はありませんが、労働者の健康の確保は事業の円滑な運営に不可欠であると考えると、できるだけ労働者の便宜をはかり所定労働時間内に行うことで賃金を支払うことが望ましいとされています。

一方、特殊健康診断は、所定労働時間内に行わなければならず時間外などに実施すれば、その時間についても割増賃金を支払う必要があります。


flairポイント!
定期健康診断に要する時間は、労働時間として取り扱っている会社が多いようです。皆さんが働きやすい労働環境となるよう労使間でよく話し合ってみましょう!

2022年10月26日 (水)

労働日数と労働時間の変更による年次有給休暇

Q  現在、飲食店で1週間に4日(1日3時間)のアルバイトをしていて、年次有給休暇が4日と2時間残っています。年度の途中で働き方が1週間に5日勤務(1日5時間)に変更されることになり、上司から「年次有給休暇の残りに変更はない」と言われましたが、本当ですか。(年次有給休暇の付与は労働基準法どおりと聞いています)


A  年次有給休暇の付与基準日の後に所定労働日数等が変更されても既に付与されている年次有給休暇の日数は変わりません。ただし、時間単位の取得が認められている場合で、日単位に満たない時間が残っている場合は所定労働時間の変更に比例して時間数が変わります。


付与すべき年次有給休暇の日数は、年次有給休暇を取得する権利が発生した日(基準日)の所定労働日数・所定労働時間によって決まります。基準日から1年間(次の基準日まで)の間に、所定労働日数や所定労働時間が変更されても既に付与された年次有給休暇の日数は変わりません。1日に満たない時間が残っている場合は、以下の通りに所定労働時間の変更に応じて時間数が変わります。

 
今回の4日2時間の年次有給休暇は、働き方が変わると以下のとおりになります。

【日数は変わりません】

   4日→4日

【1日当たりの時間数は、3時間→5時間に変わります】

   計算式:2時間×5(変更後の所定労働時間)=3.33(※1時間未満の端数は切り上げます)
             3(変更前の所定労働時間)

つまり、所定労働日数・時間の変更後は、

    4日2時間→4日4時間 となります。


flairポイント! 
所定労働日数や所定労働時間の変更は、育児短時間勤務をする時やパートの勤務時間が変更となった時、パートから社員に登用されたときなど様々な場合が考えられるので、自分の年次有給休暇を把握して取得しましょう。