労働相談Q&A(全) Feed

2022年12月15日 (木)

「産業医・産業保健機能」の強化

Q 働き方改革で「産業医・産業保健機能」を強化するとありましたが、どのように強化されたのでしょうか?


A 長時間労働やメンタルヘルス不調などにより、健康リスクが高い状況にある労働者を見逃さないために、産業医による面接指導や健康相談等「産業医・産業保健機能」の強化が求められます。

具体的には、事業者は従業員の健康管理を適切に行うために必要な情報を産業医に提供しなければならないことや、産業医による従業員の健康相談を充実するための体制整備ならびに、会社による従業員の健康情報の収集や保管、適正な管理などの規定を作る必要があります。


1)産業医の活動環境の整備
事業者は、長時間労働者の状況や労働者の業務状況など、産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報提供をしなければなりません。また事業者は、産業医から受けた勧告の内容や勧告を踏まえて講じた措置または講じようとする措置の内容を事業場の労使や産業医で構成する衛生委員会に報告しなければなりません。

2)労働者に対する健康相談の体制整備、労働者の健康情報の適正な取り扱いルールの推進
事業者は、産業医等が労働者からの健康相談に応じるための体制整備に努めなければなりません。また、事業者は労働者の健康情報の収集、保管、使用及び適正な管理について指針を定め、労働者が安心して健康相談や健康診断を受けられるようにしましょう。

 

産業医とは
従業員が健康で快適な作業環境のもと業務が行えるよう専門的な立場から指導や助言を行う医師のことです。
労働安全衛生法において常時50人以上の従業員を使用する事業場において事業者は産業医を選任しなければなりません。また、50人未満の事業場においては、産業医の選任義務はありませんが、従業員の健康管理を専門家に行わせるよう努めなければなりません。

 

「地域産業保健センターの活用」

 労働者数50人未満の小規模事業場の事業者とそこで働く労働者を対象に産業保健支援サービスを充実させることを目的として、地域産業保健センターが開設されています。

 [地域産業保健センターでの支援サービス内容] 

  1.健康診断の結果について医師からの意見聴取

  2.長時間労働者や高ストレス者に対する面接指導

  3.労働者のこころと身体の健康管理にかかわる相談

  4.専門スタッフによる個別訪問指導


 flairポイント!

産業医や地域産業保健センターを上手に活用して、従業員が安心して健康相談を受けられるような体制整備や健康情報の取り扱いのルールを定めましょう。

2022年12月 3日 (土)

パート・アルバイトの健康診断の実施について

Q 来月からアルバイトとして働くことになり、会社から健康診断を受けてくるように言われました。アルバイトでも健康診断を受けないといけないのでしょうか。また、費用負担は会社にしてもらえますか。


A 労働安全衛生法により、事業者には健康診断の実施が義務付けられているため、アルバイトであっても「“雇い入れ時”の健康診断の実施対象者」に該当する場合は、健康診断を受けなければなりません。(参考:厚労省健康診断チラシPDF)  

なお、すでに雇い入れ前3か月以内に医師による健康診断を受けていて検査項目が重複する場合は、その検査項目の実施は省略できるとされていますので、該当する健康診断の結果がある場合は会社に提出しましょう。

費用については、法律上、事業者に健康診断の実施が義務付けられているため、当然に事業者が負担すべきとされています。


 【健康診断の種類(抜粋)】

労働安全衛生法で、事業者に実施が義務付けられている主な健康診断と対象者は、次のとおりです。







健康診断の種類

実施対象となる労働者

実施時期

雇入時健康診断

常時使用する労働者

雇い入れ時

定期健康診断

常時使用する労働者

(特定業務従事者を除く)

1年に1回

特定業務従事者

健康診断

特定業務に常時

使用する労働者

特定業務配置時

及び6月以内に1回

 ※この他、有害業務に従事する労働者や海外派遣労働者を対象とした健康診断もあり、

それぞれ法令で定められています。

 【実施対象となる労働者について】

 パート等の短時間労働者 
 パート労働者等の短時間労働者が『常時使用する労働者』に該当するかどうかについては、次のとおりとされています。(平成19年10月1日基発第1001016号通達)

 常時使用する労働者とは、次の(1)(2)のどちらも満たす場合とされています。

(1)・期間の定めのない契約により使用される者

    ・有期契約の労働者は、1年以上の雇用予定がある者及び更新により1年以上雇用されている者

        ・特定業務従事者の雇入時健康診断は、6カ月以上の雇用予定があるか又は更新により6カ月以上雇用されている者

(2)週の労働時間数が、通常の労働者(同事業場内の同種業務に従事する者)の4分の3以上である者


実施が望ましいとされている労働者 
常時使用する労働者の要件の(1)のみに該当し、週の労働時間数が通常の労働者(同事業場内の同種業務に従事する者)の2分の1以上ある者は、実施が望ましいとされています。

 

派遣労働者(労働者派遣事業法に基づく者) 
派遣労働者の一般健康診断は、派遣元の事業場で実施し、有害業務従事労働者の健康診断は派遣先の事業場で実施することとなります。

 

【健康診断の費用】
労働安全衛生法で事業者に実施が義務付けられている健康診断の費用は、当然に事業者負担とすべきとされています。

 

【健康診断受診に要した時間の取り扱い】
定期健康診断は、特に所定労働時間内に実施する義務はありませんが、労働者の健康の確保は事業の円滑な運営に不可欠であると考えると、できるだけ労働者の便宜をはかり所定労働時間内に行うことで賃金を支払うことが望ましいとされています。

一方、特殊健康診断は、所定労働時間内に行わなければならず時間外などに実施すれば、その時間についても割増賃金を支払う必要があります。


flairポイント!
定期健康診断に要する時間は、労働時間として取り扱っている会社が多いようです。皆さんが働きやすい労働環境となるよう労使間でよく話し合ってみましょう!

2022年10月26日 (水)

労働日数と労働時間の変更による年次有給休暇

Q  現在、飲食店で1週間に4日(1日3時間)のアルバイトをしていて、年次有給休暇が4日と2時間残っています。年度の途中で働き方が1週間に5日勤務(1日5時間)に変更されることになり、上司から「年次有給休暇の残りに変更はない」と言われましたが、本当ですか。(年次有給休暇の付与は労働基準法どおりと聞いています)


A  年次有給休暇の付与基準日の後に所定労働日数等が変更されても既に付与されている年次有給休暇の日数は変わりません。ただし、時間単位の取得が認められている場合で、日単位に満たない時間が残っている場合は所定労働時間の変更に比例して時間数が変わります。


付与すべき年次有給休暇の日数は、年次有給休暇を取得する権利が発生した日(基準日)の所定労働日数・所定労働時間によって決まります。基準日から1年間(次の基準日まで)の間に、所定労働日数や所定労働時間が変更されても既に付与された年次有給休暇の日数は変わりません。1日に満たない時間が残っている場合は、以下の通りに所定労働時間の変更に応じて時間数が変わります。

 
今回の4日2時間の年次有給休暇は、働き方が変わると以下のとおりになります。

【日数は変わりません】

   4日→4日

【1日当たりの時間数は、3時間→5時間に変わります】

   計算式:2時間×5(変更後の所定労働時間)=3.33(※1時間未満の端数は切り上げます)
             3(変更前の所定労働時間)

つまり、所定労働日数・時間の変更後は、

    4日2時間→4日4時間 となります。


flairポイント! 
所定労働日数や所定労働時間の変更は、育児短時間勤務をする時やパートの勤務時間が変更となった時、パートから社員に登用されたときなど様々な場合が考えられるので、自分の年次有給休暇を把握して取得しましょう。

2022年9月 2日 (金)

新型コロナウイルス感染症の陽性者になったら

Q  のどに違和感があり、念のためPCR検査を受けた結果「新型コロナウイルス陽性」と判明し10日間の自宅療養をすることになりました。10日間休む時の給料はどうなりますか?また、同居家族は濃厚接触者となるのでPCR検査をしたところ陰性でした。健康観察期間5日間と言われ上司と相談し休むことになりました。その間同居家族の給料はどうなりますか。


 まずはそれぞれの就業規則で、有給の特別休暇制度がないか確認しましょう。新型コロナウイルスに感染された方は、ご加入の健康保険に申請することにより傷病手当金が支給されます。濃厚接触者で陰性だった方は、個別事案ごとに判断されますが休業手当が支給される場合があります。


【新型コロナウイルスに感染した場合】
新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当は支払われません。健康保険に加入されている方であれば、傷病手当金が支給されます。 具体的には、療養のために労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から、直近12カ月の平均の標準報酬日額の3分の2が支給されます。会社へ相談してみましょう。(市町村国保に加入の方はお住いの市町村役場へお問い合わせください。2022年(令和4年)9月末までの措置)
なお、感染の要因が業務に起因したものであると認められた場合には、労災保険給付の対象となりますので事業場を管轄する労働基準監督署にご相談ください。

【参考】傷病手当金の支給について、2022年(令和4年)8月9日以降に申請を受け付けたものについて、当面の間、新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の支給における臨時的な取扱いとして、医師の意見書の添付は不要とし、「療養状況申立書」または「HER-SYSの登録画面」や事業主からの当該期間、被保険者が療養のため労務に服さなかった旨を証明する書類などを添付することにより、保険者が労務不能と認めた場合、傷病手当金を支給する扱いとなりました。詳しくは協会けんぽへご相談ください。

 【濃厚接触者で陰性の場合】
濃厚接触者で陰性だった場合は、個別事案ごとに判断されますが、労務提供が可能であるのに、使用者の自主的判断で休業させた場合には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払う必要があります。ただし、不可抗力※による休業の場合は、休業手当の支払義務はありません。

※ここでいう不可抗⼒とは、
① その原因が事業の外部より発生した事故であること
② 事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお 避けることができない事故であること
という要素をいずれも満たす必要があります。
例えば、自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合に、これを十分に検討するなど休業の回避について通常行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた時には「使用者の責に帰すべき事由による休業」として休業手当の支払いが必要となることがある。

会社が休業手当を支払ってくれない時は、労働者自らも申請できる国の支援策の「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」制度を活用しましょう。

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金
新型コロナウイルス感染症およびまん延防止措置の影響で休業させられた労働者が、休業手当の支払いを受けることが出来なかった場合、申請により支給される。

支給金額:休業前の1日当たりの平均賃金×80%×(各月の休業期間の日数-就業した
又は労働者の事情で休んだ日数)

問合せ先:新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金コールセンター
0120-221-276 (受付 8:30-20:00(平日)土日祝8:30-17:15)

*雇用保険に加入していないシフト制のアルバイトや日々雇用の方でも対象となる場があります。
*会社に金銭的な負担は生じません。
*労働者が支給申請や相談したことを理由に不当な扱いをすることは出来ません。


flairポイント! 
・休業期間中の賃金の支払いの必要性については、個別事案ごとに判断されます。休業中の規定がどのような扱いになっているのか会社の規定を確認しておきましょう。
・年休の取得理由は関係ないので、休業を年次有給休暇にあてることは問題ありませんが、年次有給休暇は原則、労働者の請求する時季に与えなければならないものなので、使用者が一方的に取得させることはできません。
鳥取労働局では、「新型コロナ感染症の影響による特別労働相談窓口」を開設し、相談を行っています。TEL0857ー22ー7000 8:30~17:15(平日のみ)

・陽性者の場合、ご自身がご加入されている生命保険で保険金や見舞金が出ることもあるようなので、ご自身が加入している保険内容を確認してみましょう。

 【参考】1_3


掲載内容は2022年8月時点でのものです。
最新の情報は、労働局のHPでご確認ください。
新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

 

2022年8月 1日 (月)

失業給付の受給期間延長

Q 体調を崩して休職しており先日から健康保険の傷病手当金を受給中です。しかし、職場復帰も難しいので退職することにしました。失業給付の手続きをして、傷病手当金と併せて受給することは可能でしょうか。


A 傷病手当金(健康保険)と失業給付(雇用保険)の併給はできません。

失業給付の支給要件は、労働の意思・能力を有することが必要であること、傷病手当金は労務不能を支給要件とするためです。


離職し、「就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力(健康状態・家庭環境など)があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず就職できない状態」にある方でないと、失業給付の支給を受けることは出来ません。

失業給付は、原則、離職後1年が受給期間となっています。この期間にそれぞれの給付日数分が支給されます。しかし、この受給期間内に下記の理由で引き続き30日以上職業に就くことが出来ない場合は、ハローワークに申請することで受給期間を延長(本来の受給期間1年に最長3年間をプラス)することが出来ます。

受給期間の延長が出来る理由

  • 妊娠・出産・育児(3歳未満に限る)などにより働くことが出来ない
  • 病気やケガで働くことが出来ない(健康保険の傷病手当、労災保険の休業補償を受給中の場合含む)
  • 親族等の介護のため働くことが出来ない(6親等以内の血族、配偶者及び3親等以内の姻族)
  • 事業主の命により海外勤務をする配偶者に同行
  • 青年海外協力隊等公的機関が行う海外技術指導による海外派遣
  • 60歳以上の定年等により離職し、しばらくの間休養する

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ご相談者の場合は、退職後も傷病手当金を継続して受給することになると思いますので、失業給付はその間「受給期間の延長」申請をハローワークでする必要があります。傷病手当の受給が終了し、すぐに働ける状態になってから「失業給付の受給」申請をハローワークで行いましょう。


flairポイント! 

病気やケガ等が理由で受給期間の延長をする場合の申請時期は、延長後の受給期間の最終日までですが、申請が遅い場合には所定給付日数の全てを受給できない可能性がありますので、なるべく早期に申請することが必要です。

2022年7月 4日 (月)

選挙と労働時間の取り扱い

Q 選挙の投票に行きたいのですが仕事が入っています。仕事中に選挙に行きたいのですがどのような権利が補償されているのでしょうか?


A 使用者は、労働者が労働時間中に選挙権や被選挙権など「公民としての権利」を行使し、または国会議員や裁判員としての職務など「公の職務」を執行するために必要な時間を請求した場合においては、それを拒んではならない(労働基準法第7条)となっています。


(公民としての権利)

・選挙権
・被選挙権
・最高裁判所裁判官の国民審査
・行政事件訴訟法に規定する民衆訴訟
・公職選挙法に規定する選挙または当選の効力に関する訴訟 など

 

(公の職務)

・衆議院議員その他の議員の職務
・労働委員会の委員の職務
・労働審判員の職務
・訴訟法上の証人としての出廷
・選挙立会人の職務
・裁判員の職務 など

 

【 公民権行使 】

選挙権、被選挙権の行使などに必要な時間を労働者が請求した場合は、使用者は拒むことができません。しかし、権利の行使または公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができるとも定められています。(労働基準法第7条)

 従業員が国会や地方議会の議員となった場合、労働委員会の委員となった場合、検察審査員、選挙立会人の職務に任じられた場合、裁判所に証人として出廷する場合なども、これに該当します。
権利行使・公の職務執行に支障がないときは、使用者は、請求された時刻の変更ができます。

なお、賃金については定めがありませんので、使用者に支払義務はありませんが、制度の趣旨からすると、賃金を失わずに権利行使ができるのが望ましいといえます。


 flairポイント! 

仕事を抜けた時間の賃金については労働基準法では特に決められていませんが、ノーワークノーペイの原則の考え方となります。就業規則などで賃金の支払の有無について確認して下さい。

2022年5月31日 (火)

職場におけるモラハラ~心を痛めつける暴力~

Q 最近、「モラハラ」という言葉を見聞きすることが多くなりましたが、職場におけるモラハラとはどういうことですか。また対処法や予防策はありますか。


A モラハラとはモラルハラスメントの略で、言葉や態度、文書などにより特定の人を繰り返し攻撃し、人としての尊厳や人格を傷つける精神的な暴力のことを言います。


パワハラは職務上の地位や人間関係など職場での優位性を背景に行われるハラスメントですが、モラハラは職場での優位性とは関係なく行われることがあります。

<例> ・継続的に無視をする

    ・見下した態度を取る

    ・仕事に必要な情報を与えない(飲み会に誘わない等も含む)

    ・わざと聞こえるように嫌味や悪口を言う

    ・本人が気にしていることを揶揄する

    ・決裁文書や休暇取得申請などを速やかに回さない(遅らせる)

    ・頼まれたことをしない

    ・仕事の仕方を聞かれても教えない  など

 

 パワハラは周囲の人にも比較的わかりやすく、表面化しやすい傾向にありますが、モラハラは往々にして巧妙・陰湿な手口で行われ、場合によっては“ちょっとしたからかい”とか“コミュニケーションの一環”を装うように行われることもあり、周囲に気付かれにくく、事実が発覚しにくいという特徴があります。

 モラハラが職場で日常的に行われれば、被害者の受けるストレスは増大し、精神的にも身体的にも深刻なダメージとなります。モラハラの被害者はとかく自分自身に問題があるのではないかと自分のことを責め、ひとりで悩み抱え込みがちです。まずは信頼できる人や社内外の相談窓口に相談しましょう。

 

【職場(会社)としての対策】

  • 職場(会社)として『ハラスメントは絶対に許さない!』という姿勢を明確にし、従業員へ周知する
  • 相談窓口を設置して、気軽に相談できるようにしておく
  • ハラスメントに関する研修会を定期的に開催して、意識啓発しておく

 

【相談対応をする時の心構えと注意点】

  • 相談者の話をじっくり最後まで聴く(傾聴)。
  • 相談内容を相談者の了解なく、外部に漏らさない(守秘義務)。
  • 体調面の異常が認められるようであれば、産業医や専門医等への相談や受診を勧める。

flairポイント!

ハラスメントの芽を早めに察知し、摘んでおくことが予防の近道です。職場全体の意識を高めるよう教育研修を充実させ、日頃から話しやすい雰囲気をつくっておきましょう。

 社内での解決や予防が難しい場合は、外部の相談機関等も活用してみましょう。


 【参考】厚生労働省のポータルサイト

・ハラスメントに関するポータルサイト「あかるい職場応援団」

あかるい職場応援団 -職場のハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ)の予防・解決に向けたポータルサイト- (mhlw.go.jp)

・働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」

こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト (mhlw.go.jp)

2022年5月 2日 (月)

保育所への送迎と通勤災害

Q 共稼ぎのため、子どもを通常の通勤経路から少し離れた場所にある保育所に預けています。出勤途中に保育所に子どもを預けた後、会社に向かう途中で交通事故に遭いました。これは労災保険の通勤災害の対象となりますか。


A 子どもを保育所に預けるためにとる通勤経路は、被災者が共稼ぎで、かつ、一般的に用いられる交通手段(明らかに合理性を欠く方法を除く)による場合、経路全体が「合理的な経路及び方法」とみなされ、「通勤災害」として認められる可能性が高いと考えられます。


通勤災害とは「労働者の通勤による負傷、疾病、傷害又は死亡」を言います。

また、通勤とは、「労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間を合理的な経路及び方法により往復すること」とされています。通勤を中断したり、通勤経路から逸脱したりすると、その後の移動は、原則として通勤とは認められません(労災保険法第7条第3項)。しかし、その中断、逸脱が日常生活上必要な行為のうち、厚生労働省令で定めるやむを得ない事由により行う最小限度のものである場合にはその間を除き、その後の往復は通勤となります。(例:日用品の購入など)

今回のように、子どもを保育所へ預けるためにとる経路については、別途行政解釈(平20.4.1基発第0401042号)において、「他に子どもを監護する者がいない共稼ぎ労働者が託児所、親戚等に預けるためにとる経路は、合理的な経路と認められる」とされており、特段の理由もなく著しく遠回りとなるような場合でない限り、その経路全体が「合理的な経路」とみなされると考えられます。

「会社へ届け出ている通勤経路以外での事故は通勤災害とならない」と理解されている方がおられるかも知れませんが、要件を満たし、「合理的な経路および方法」と認定されれば通勤災害となり得ます。


flairポイント!

労災の認定は労働基準監督署が行うものなので、先ずは会社へ手続きを依頼してみましょう。

2022年3月 1日 (火)

育児休業が取得しやすくなる!?

Q 私も妻も会社務めですが10月中旬ごろに第2子の出産予定です。2歳の娘がおり産後も大変だと思うので、自分も育児休業を取りたいと考えています。男性も育児休業が取りやすくなると聞いたのですがどのようになるのですか。


A 令和4年4月から、男女ともに仕事と育児が両立できるよう、妊娠・出産(本人または配偶者)の申出者に対し、育児休業制度の個別周知や取得の意向確認を行うよう義務付けされます。また、10月には産後パパ育休制度が新設され、現行の育児休業と併せて、出産直後から複数回に分けて取得することが可能になります。従って、ご主人も出産に合わせて育児休業が取得できるし、奥さんも分割して取得できるので、どのような休業の仕方がよいかご夫婦で話し合い、制度の確認も含め会社に申し出をしてください。


1 雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置が事業主の義務(令和4年4月1日施行)

〇育児休業を取得しやすい雇用環境の整備

①育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
②育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)
③自社の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
④自社の育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
*対象社員が居なくても、雇用環境の整備は義務

〇妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置

「周知事項」  
 ①育児休業・産後パパ育休の申し出先
 ②育児休業給付に関すること
 ③育児休業・産後パパ育休期間の負担すべき社会保険料の扱い

「意向確認方法」
 ①面談 ②書面交付 ③FAX ④電子メール等 のいずれか
 *取得を控えさせるような形での個別周知と意向確認は認められません。

 

2 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件が緩和          

 
現行 育児休業の場合 令和4年4月1日~

(1)引き続き雇用された期間が1年以上

(2)1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない

(1)の要件を撤廃し、(2)のみに

※無期雇用労働者と同様の取り扱い(引き続き雇用された期間が1年未満の労働者は労使協定の締結により除外可)

3 男性の育児休業が、出生直後の時期に柔軟な取得ができる(産後パパ育休:出生時育児休業)制度の創設(令和4年10月1日施行)

 
 

産後パパ育休
(育休とは別に取得可能)

新育休制度

現行育休制度

対象期間取得可能日数

子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能

原則子が1歳(最長2歳)まで

原則子が1歳(最長2歳)まで

申出期限

原則休業の2週間前まで※1

原則1か月前まで

原則1か月前まで

分割取得 分割して2回取得可能(前もって一度に申請 分割して2回取得可能 原則分割不可
休業中の就業 労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲※2で休業中に就業することが可能 原則就業不可 原則就業不可
1歳以降の延長   育休開始日を柔軟化 育休開始日は1歳、1歳半の時点に限定
1歳以降の再取得   特別な事情がある場合に限り再取得可能 再取得不可

※1 雇用環境の整備などについて、義務付けられる内容を上回る取り組みの実施を労使協定で定めている場合は、1か月前までとすることができる。
※2 具体的な手続きの流れは以下①~④のとおりです。

①労働者が就業してもよい場合は事業主にその条件を申出
②事業主は、労働者が申し出た条件の範囲内で候補日・時間を提示
③労働者が同意 
④事業主が通知 なお、就業可能日等には上限があるので注意。

*産後パパ育休も育児休業給付の対象。11日以上就業すると出なくなるので注意。
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2022年2月 3日 (木)

予備校講師の労働者性について

Q 予備校で長く講師をしており、契約は業務委託契約です。決められた講義時間の講師をし、その対価として報酬が支払われています。しかし、授業の準備やテストの採点,授業後の生徒からの質問対応など労働時間が長くなりがちです。このような働き方は、労働基準法などの労働法の適用はうけないのでしょうか。


A 業務委託契約の名称で契約されていても、実質上の使用従属関係があれば、労働者と判断され、労基法の適用を受けることとなります。


働き方の多様化により、会社と直接の雇用関係にないケースでの働き方も増えつつあり、業務委託契約もその1つの働き方です。

業務委託は、業務遂行を目的とする「委任契約」と業務の成果物を目的とする「請負契約」に分かれますが、いずれも受託者の業務の進め方や働き方に対して、委託者が口出しすることはできません。受託者がどのように業務を行うのかは、受託者の裁量に委ねられています。もし委託者が直接指示を出したり、管理したりすると、受託者の労働者性が認められる可能性があります。そうなると雇用関係にあると判断され、労基法上の保護の対象となります。

 労働者かどうかを判断する上で「どのような契約か」よりも「実態としてどんな働き方をしているのか」が重要で、下記の要素を総合考慮して判断されます。

 <使用従属性に関する判断基準>

 1.指揮監督下の労働
  イ)仕事の依頼、業務従事の指示等に対する許諾の自由の有無
  ロ)業務遂行上の指揮監督の有無
  ハ)拘束性の有無(勤務場所・時間の指定や管理)
  ニ)代替性の有無(本人に代わって補助者等が労務を提供することが認められているか)

 2.報酬の労務対償性(報酬が仕事の成果ではなく、時間給や日給で定められているか)

 

<労働者性の判断を補強する要素>

 1.事業者性(個人事業主)の有無
  イ)機械、器具の負担関係(高額な器具を自ら準備している場合は労働者性を弱める事情となる)
  ロ)報酬の額(他の正社員より著しく高額な報酬が支払われている場合には、労働者性を弱める事情となる)

 2.専属性の程度(特定の企業に従事している場合は、労働者性を補強する事情となる)

 3.保険料の負担(雇用保険料や社会保険料が控除されている場合は、労働者性を補強する事情となる)  など


flairポイント!

以下のようなことがあれば、“労働者性がある”と判断される可能性が高いので、委託契約書等の書類を持って専門機関へ相談しましょう。

・出退勤をタイムカードで管理され、遅刻や早退した場合に欠勤控除される。

・仕事の進め方や作業手順を、自分の判断で決めることができない。

・給料が時間で支払われており、給与所得として源泉徴収される。

・仕事を依頼されても、拒否することができない。