労働相談Q&A(全) Feed

2022年5月31日 (火)

職場におけるモラハラ~心を痛めつける暴力~

Q 最近、「モラハラ」という言葉を見聞きすることが多くなりましたが、職場におけるモラハラとはどういうことですか。また対処法や予防策はありますか。


A モラハラとはモラルハラスメントの略で、言葉や態度、文書などにより特定の人を繰り返し攻撃し、人としての尊厳や人格を傷つける精神的な暴力のことを言います。


パワハラは職務上の地位や人間関係など職場での優位性を背景に行われるハラスメントですが、モラハラは職場での優位性とは関係なく行われることがあります。

<例> ・継続的に無視をする

    ・見下した態度を取る

    ・仕事に必要な情報を与えない(飲み会に誘わない等も含む)

    ・わざと聞こえるように嫌味や悪口を言う

    ・本人が気にしていることを揶揄する

    ・決裁文書や休暇取得申請などを速やかに回さない(遅らせる)

    ・頼まれたことをしない

    ・仕事の仕方を聞かれても教えない  など

 

 パワハラは周囲の人にも比較的わかりやすく、表面化しやすい傾向にありますが、モラハラは往々にして巧妙・陰湿な手口で行われ、場合によっては“ちょっとしたからかい”とか“コミュニケーションの一環”を装うように行われることもあり、周囲に気付かれにくく、事実が発覚しにくいという特徴があります。

 モラハラが職場で日常的に行われれば、被害者の受けるストレスは増大し、精神的にも身体的にも深刻なダメージとなります。モラハラの被害者はとかく自分自身に問題があるのではないかと自分のことを責め、ひとりで悩み抱え込みがちです。まずは信頼できる人や社内外の相談窓口に相談しましょう。

 

【職場(会社)としての対策】

  • 職場(会社)として『ハラスメントは絶対に許さない!』という姿勢を明確にし、従業員へ周知する
  • 相談窓口を設置して、気軽に相談できるようにしておく
  • ハラスメントに関する研修会を定期的に開催して、意識啓発しておく

 

【相談対応をする時の心構えと注意点】

  • 相談者の話をじっくり最後まで聴く(傾聴)。
  • 相談内容を相談者の了解なく、外部に漏らさない(守秘義務)。
  • 体調面の異常が認められるようであれば、産業医や専門医等への相談や受診を勧める。

flairポイント!

ハラスメントの芽を早めに察知し、摘んでおくことが予防の近道です。職場全体の意識を高めるよう教育研修を充実させ、日頃から話しやすい雰囲気をつくっておきましょう。

 社内での解決や予防が難しい場合は、外部の相談機関等も活用してみましょう。


 【参考】厚生労働省のポータルサイト

・ハラスメントに関するポータルサイト「あかるい職場応援団」

あかるい職場応援団 -職場のハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ)の予防・解決に向けたポータルサイト- (mhlw.go.jp)

・働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」

こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト (mhlw.go.jp)

2022年5月 2日 (月)

保育所への送迎と通勤災害

Q 共稼ぎのため、子どもを通常の通勤経路から少し離れた場所にある保育所に預けています。出勤途中に保育所に子どもを預けた後、会社に向かう途中で交通事故に遭いました。これは労災保険の通勤災害の対象となりますか。


A 子どもを保育所に預けるためにとる通勤経路は、被災者が共稼ぎで、かつ、一般的に用いられる交通手段(明らかに合理性を欠く方法を除く)による場合、経路全体が「合理的な経路及び方法」とみなされ、「通勤災害」として認められる可能性が高いと考えられます。


通勤災害とは「労働者の通勤による負傷、疾病、傷害又は死亡」を言います。

また、通勤とは、「労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間を合理的な経路及び方法により往復すること」とされています。通勤を中断したり、通勤経路から逸脱したりすると、その後の移動は、原則として通勤とは認められません(労災保険法第7条第3項)。しかし、その中断、逸脱が日常生活上必要な行為のうち、厚生労働省令で定めるやむを得ない事由により行う最小限度のものである場合にはその間を除き、その後の往復は通勤となります。(例:日用品の購入など)

今回のように、子どもを保育所へ預けるためにとる経路については、別途行政解釈(平20.4.1基発第0401042号)において、「他に子どもを監護する者がいない共稼ぎ労働者が託児所、親戚等に預けるためにとる経路は、合理的な経路と認められる」とされており、特段の理由もなく著しく遠回りとなるような場合でない限り、その経路全体が「合理的な経路」とみなされると考えられます。

「会社へ届け出ている通勤経路以外での事故は通勤災害とならない」と理解されている方がおられるかも知れませんが、要件を満たし、「合理的な経路および方法」と認定されれば通勤災害となり得ます。


flairポイント!

労災の認定は労働基準監督署が行うものなので、先ずは会社へ手続きを依頼してみましょう。

2022年3月 1日 (火)

育児休業が取得しやすくなる!?

Q 私も妻も会社務めですが10月中旬ごろに第2子の出産予定です。2歳の娘がおり産後も大変だと思うので、自分も育児休業を取りたいと考えています。男性も育児休業が取りやすくなると聞いたのですがどのようになるのですか。


A 令和4年4月から、男女ともに仕事と育児が両立できるよう、妊娠・出産(本人または配偶者)の申出者に対し、育児休業制度の個別周知や取得の意向確認を行うよう義務付けされます。また、10月には産後パパ育休制度が新設され、現行の育児休業と併せて、出産直後から複数回に分けて取得することが可能になります。従って、ご主人も出産に合わせて育児休業が取得できるし、奥さんも分割して取得できるので、どのような休業の仕方がよいかご夫婦で話し合い、制度の確認も含め会社に申し出をしてください。


1 雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置が事業主の義務(令和4年4月1日施行)

〇育児休業を取得しやすい雇用環境の整備

①育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
②育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)
③自社の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
④自社の育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
*対象社員が居なくても、雇用環境の整備は義務

〇妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置

「周知事項」  
 ①育児休業・産後パパ育休の申し出先
 ②育児休業給付に関すること
 ③育児休業・産後パパ育休期間の負担すべき社会保険料の扱い

「意向確認方法」
 ①面談 ②書面交付 ③FAX ④電子メール等 のいずれか
 *取得を控えさせるような形での個別周知と意向確認は認められません。

 

2 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件が緩和          

 
現行 育児休業の場合 令和4年4月1日~

(1)引き続き雇用された期間が1年以上

(2)1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない

(1)の要件を撤廃し、(2)のみに

※無期雇用労働者と同様の取り扱い(引き続き雇用された期間が1年未満の労働者は労使協定の締結により除外可)

3 男性の育児休業が、出生直後の時期に柔軟な取得ができる(産後パパ育休:出生時育児休業)制度の創設(令和4年10月1日施行)

 
 

産後パパ育休
(育休とは別に取得可能)

新育休制度

現行育休制度

対象期間取得可能日数

子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能

原則子が1歳(最長2歳)まで

原則子が1歳(最長2歳)まで

申出期限

原則休業の2週間前まで※1

原則1か月前まで

原則1か月前まで

分割取得 分割して2回取得可能(前もって一度に申請 分割して2回取得可能 原則分割不可
休業中の就業 労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲※2で休業中に就業することが可能 原則就業不可 原則就業不可
1歳以降の延長   育休開始日を柔軟化 育休開始日は1歳、1歳半の時点に限定
1歳以降の再取得   特別な事情がある場合に限り再取得可能 再取得不可

※1 雇用環境の整備などについて、義務付けられる内容を上回る取り組みの実施を労使協定で定めている場合は、1か月前までとすることができる。
※2 具体的な手続きの流れは以下①~④のとおりです。

①労働者が就業してもよい場合は事業主にその条件を申出
②事業主は、労働者が申し出た条件の範囲内で候補日・時間を提示
③労働者が同意 
④事業主が通知 なお、就業可能日等には上限があるので注意。

*産後パパ育休も育児休業給付の対象。11日以上就業すると出なくなるので注意。
2

2022年2月 3日 (木)

予備校講師の労働者性について

Q 予備校で長く講師をしており、契約は業務委託契約です。決められた講義時間の講師をし、その対価として報酬が支払われています。しかし、授業の準備やテストの採点,授業後の生徒からの質問対応など労働時間が長くなりがちです。このような働き方は、労働基準法などの労働法の適用はうけないのでしょうか。


A 業務委託契約の名称で契約されていても、実質上の使用従属関係があれば、労働者と判断され、労基法の適用を受けることとなります。


働き方の多様化により、会社と直接の雇用関係にないケースでの働き方も増えつつあり、業務委託契約もその1つの働き方です。

業務委託は、業務遂行を目的とする「委任契約」と業務の成果物を目的とする「請負契約」に分かれますが、いずれも受託者の業務の進め方や働き方に対して、委託者が口出しすることはできません。受託者がどのように業務を行うのかは、受託者の裁量に委ねられています。もし委託者が直接指示を出したり、管理したりすると、受託者の労働者性が認められる可能性があります。そうなると雇用関係にあると判断され、労基法上の保護の対象となります。

 労働者かどうかを判断する上で「どのような契約か」よりも「実態としてどんな働き方をしているのか」が重要で、下記の要素を総合考慮して判断されます。

 <使用従属性に関する判断基準>

 1.指揮監督下の労働
  イ)仕事の依頼、業務従事の指示等に対する許諾の自由の有無
  ロ)業務遂行上の指揮監督の有無
  ハ)拘束性の有無(勤務場所・時間の指定や管理)
  ニ)代替性の有無(本人に代わって補助者等が労務を提供することが認められているか)

 2.報酬の労務対償性(報酬が仕事の成果ではなく、時間給や日給で定められているか)

 

<労働者性の判断を補強する要素>

 1.事業者性(個人事業主)の有無
  イ)機械、器具の負担関係(高額な器具を自ら準備している場合は労働者性を弱める事情となる)
  ロ)報酬の額(他の正社員より著しく高額な報酬が支払われている場合には、労働者性を弱める事情となる)

 2.専属性の程度(特定の企業に従事している場合は、労働者性を補強する事情となる)

 3.保険料の負担(雇用保険料や社会保険料が控除されている場合は、労働者性を補強する事情となる)  など


flairポイント!

以下のようなことがあれば、“労働者性がある”と判断される可能性が高いので、委託契約書等の書類を持って専門機関へ相談しましょう。

・出退勤をタイムカードで管理され、遅刻や早退した場合に欠勤控除される。

・仕事の進め方や作業手順を、自分の判断で決めることができない。

・給料が時間で支払われており、給与所得として源泉徴収される。

・仕事を依頼されても、拒否することができない。

2022年1月25日 (火)

マルチジョブホルダー

Q 私は長年勤めていた会社を65歳で定年退職した後、近所のスーパーAで週10時間、ファミレスBで週10時間パートタイマーとして働き始めました。どちらも1年の有期雇用契約です。Aの店長にもBの店長にも雇用保険には加入出来ないと言われましたが本当に出来ないのでしょうか?


A 加入できます。ただし、自分で手続きをしなければなりません。ご住所を管轄するハローワークへ行き、手続きをしましょう。


 令和4年1月1日に「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が施行されました。雇用保険マルチジョブホルダー制度とは、2つ以上の事業所に雇用される65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所で所定の適用要件をすべて満たす場合に本人の申出により特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度をいいます。  

適用要件 ①2つ以上の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
     ②2つの事業所(それぞれ週所定労働時間5時間以上20時間未満)の
      労働時間を合計して週所定労働時間が20時間以上であること
     ③2つの事業所でそれぞれ31日以上雇用される見込であること

 加入手続は、複数の事業所の労働時間を各事業所が把握することは困難なので、労働者本人が行います。労働者は自らの居住地を管轄するハローワークに「雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届」(マルチ雇入届)を提出することで申出の日からマルチ高年齢被保険者となります。勤務先の事業主の同意は必要とされていません。もっとも、マルチ雇入届には事業主記載欄があるため、労働者から記載を依頼された事業主は速やかに対応しなければなりません。また、マルチ高年齢被保険者として雇用保険に加入すること等を理由として解雇や雇止め、労働条件の不利益変更など、労働者に不利益な取り扱いをすることは禁止されます。

 雇用保険料の納付義務は、マルチ高年齢被保険者の資格を取得した日から発生します。資格取得日は、ハローワークから事業主宛に送付される「雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得確認通知書(事業主通知用)」に記載されています。雇用保険料は通常の雇用保険と同様の料率で、労働者本人と事業主が負担します。

 同じく、資格喪失手続も労働者本人が行います。労働者は被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内に自らの居住地を管轄するハローワークに「雇用保険マルチジョブホルダー喪失・資格喪失届」(マルチ喪失届)を提出します。また、失業等給付の受給を希望する場合には、併せて離職証明書の提出も必要になります。マルチ喪失届には事業主記載欄があるので、労働者から記載を依頼された事業主は速やかに対応しなければなりません。

 失業時の給付は、一時金です。1つの事業所のみ離職した場合でもその事業所の賃金額に基づき支給されます。正当な理由のない自己都合離職である場合等の給付制限も同様に適用されますが、2つの事業所を離職して離職理由がそれぞれ異なる場合は給付制限がないほうに統一されます。

 マルチ高年齢被保険者が3つ以上の事業所で雇用されていた場合は、適用対象になっている2つのうちの1つの事業所を離職等しても、他の事業所の週所定労働時間を合算して20時間以上になるなど適用要件を満たすのであれば引き続きマルチ高年齢被保険者として取扱われます。この場合、労働者は従前の2事業所に関するマルチ喪失届を提出した後、改めて新たな2事業所でのマルチ雇入届を提出しなければなりません。

 

2021年12月24日 (金)

移動時間は労働時間になるのでしょうか?

Q 上司から県外への出張命令が出ました。飛行機や新幹線で長時間の移動になります。
  この移動時間は労働時間になるのでしょうか?


A 労働時間について労基法上では「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義されています。

例えば、始業前の朝礼への参加が義務付けられている時間や制服の着用、業務上必要な装着物品の準備などに要する時間も使用者の指揮命令下に置かれている時間として労働時間に該当します。

そのような観点から、移動時間も労働時間に当たるのではないかと思われるかもしれませんが、移動中に上司から指示されたPC入力やWeb会議の報告書作成や商品の運搬時の見守りなどをしていれば、移動時間は労働時間となりますが、何も命令がなく機内・車内で自由に過ごせる時間であれば日常の通勤時間と同様に考えられるので労働時間とはならず賃金が払われることはありません。

一方で、長時間の移動や宿泊などに要する〝完全に自由ではない時間″に対して、賃金ではなく会社独自の手当(例 出張手当や日当など)を支払っている会社もあります。

 

頻繁な出張の繰り返しや通常勤務との調整で労働者に肉体的・精神的多大な負担が生じている場合は、使用者の安全配慮義務が履行されていない可能性があるため労使間で十分話し合い、適切なルール作りをしてください。


 flairポイント!

・ 手当に含まれる内容や使い道については会社独自の決まりがありますので社内の規定を確認すると良いでしょう。

 ・直行直帰というルールを採用している会社もあります。直行とは、自宅から相手先や現場などへ、会社に寄らずに行くこと直帰とは、相手先や現場などから、会社に寄らずに自宅へ帰ることを言います。この場合、現場に到着してから現場を離れるまでの休憩時間を除いた時間が使用者(会社)の指揮命令下に置かれている時間なので労働時間となり、直行直帰の移動時間は通勤時間と判断されます。

2021年11月24日 (水)

職場の温湿度管理について

Q 新型コロナウイルス感染症対策として、事務所の窓が全開で、寒くて仕事に集中できません。衣服を調整したり、ひざ掛けを使用したりしていますが、手足がかじかんでうまく動かせず、コロナを予防できたとしても体調を崩しそうです。こうした環境については問題はありませんか。


A デスクワークが仕事となっている人は、ずっと部屋の中で作業をすることになるので、室温は体調管理を行う上での大切なポイントになります。
温度や湿度を含む職場の快適な空間作りのルールは、基準が設けられており、事業者には適切な温湿度管理が求められます。職場の安全衛生の担当者や安全衛生委員会に改善を求めてみましょう。


○使用者には労働者に対し、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務(安全配慮義務)があります。(労働契約法第5条)
また、事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、作業環境を快適な状態に維持管理するための措置を継続的かつ計画的に講ずることにより、快適な職場環境を形成するように努めなければなりません。(労働安全衛生法第71条の2第1項)

湿度や温度を直接定めた規定ではありませんが、極端に寒い、あるいは暑い職場で従業員が体調を崩した場合、使用者が安全配慮義務違反に問われる可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症対策を講じることも使用者の責務です。この対策が不十分な場合にも使用者は安全配慮義務違反に問われる可能性があります。

○労働者が働く事務所(建物・施設)についての衛生基準が労働安全衛生法に基づく労働安全衛生規則及び事務所衛生基準規則で事務所の室温・湿度について基準が定められています。

【暖房】
室の気温が10度以下の場合は、暖房する等適当な温度調節の措置を講じなければならない。
もし室温が10度以下になっているときは、適切な室温に戻すため、ストーブや暖房をつけるなど対策を心がけていかなければなりません。あまりに寒い環境は仕事の効率を下げるだけでなく、体調不良の原因にもなります。もし10度以下でもそのような措置がなされていない場合は法律違反とみなされる場合があり、法人と代表者に6カ月以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

【冷房】
室を冷房する場合は、当該室の気温を外気温より著しく低くしてはならない。
ただし、電子計算機といった機械を設置している部屋(サーバールーム等)においては、保温のための作業着を着させている限りOKとなっています。

【室温・湿度】
空気調和設備を設けている場合は、室の気温が17℃以上28℃以下及び相対湿度が40%以上70%以下になるように努めなければならない。
ただし、店舗や工場においては、事務作業や電話対応などを行う部屋のみに適用され、商品の製造販売などを行うスペースは適用外となります。


flairポイント!
コロナ対策を講じながら、快適な職場環境を労使で考えていく必要があります。室温変化を抑えられる窓開け換気の方法を提案するなど、まずは職場内で話し合いをしましょう。会社に改善を求めても、対応しない場合は、労働基準監督署へ相談に行くことをおすすめします。


―参考― 
厚生労働省HP 『感染拡大防止と医療提供体制の整備』 クラスター対策

・冬場における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気について
https://www.mhlw.go.jp/content/000698866.pdf

・冬場における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法(リーフレット) https://www.mhlw.go.jp/content/000698868.pdf

※世界保健機関(WHO)等は新型コロナウイルス感染症の拡大防止のためと一般住民の健康を維持するために、バランスのとれたものとして、室内温度の下限値を18℃、相対湿度の下限値を40%とすることを推奨しています。

 

2021年10月27日 (水)

副業・兼業について(その3)

Q 副業・兼業をしたとき労災などの保険関係はどうなりますか。


A ◎労災保険について

事業主は、労働者が副業・兼業(複数事業労働者)をしているかに関わらず、労働者を一人でも雇用していれば労災保険の加入手続きを行う必要があります。副業・兼業をしている労働者も安心して働くことができる環境を整備するために、労災保険給付が拡充されました。(R2.9.1~)

ただし、副業が個人事業主や経営者の立場だという理由で労災保険に加入されていない場合は労災給付の対象とはなりません。5

Photo_5 ◎雇用保険について

 雇用保険の適用事業所に勤務している労働者で、
①同一の事業主の下で週20時間以上
②31日以上継続して働く
等の加入要件を満たす場合は雇用保険に加入する義務があります。副業を行っている労働者がそれぞれの雇用関係で加入要件を満たす場合は、主たる賃金を受けている事業所で加入します。そのため、給付事由が生じた時(失業、育休など)は、加入している事業所での収入から給付日額が算定されます。

 また、それぞれの雇用関係が①②の加入要件を満たさない場合は、たとえ労働時間の合算が20時間以上となる場合でも雇用保険には加入できません。

◎労働契約によって雇用保険の適用が異なる例

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ただし、65歳以上の労働者本人から申し出があった場合、一の雇用関係では被保険者要件を満たさない場合でも、二の事業所の労働時間を合算して雇用保険を適用することが試行的に開始されます。(令和4年1月1日から)

 

◎健康保険・厚生年金保険について

 社会保険(健康保険及び厚生年金保険)の適用要件は、適用事業所や被保険者ごとに判断されます。複数の事業所に勤務する労働者がいずれの事業所においても適用要件を満たさない場合は被保険者とはなりません。もしも、配偶者等の健康保険被扶養者となっている方が、副業によって収入が130万円を超える等の場合、被扶養者の認定要件を満たさなくなり、併せて国民年金の第3号被保険者ではなくなります。市町村窓口で国民健康保険・国民年金に加入することが必要です。

また、既に社会保険に加入されている方が、副業先でも適用要件を満たす場合は、副業先でも社会保険の加入手続きをする必要があります。その後労働者本人がいずれかの事業所の管轄の医療保険者及び年金事務所を選択します。各事業所の報酬月額を合算して算定された標準報酬月額を案分した保険料がそれぞれの事業所で控除されます。


flairポイント!
副業を行うことでスキルや経験を得たり、やりたいことに挑戦でき、キャリア形成や自己実現を追求できますが、自身による就業時間や健康管理も一定程度必要となります。
また、所得の増加によって保険料などに変更が生じるものもあるので注意しましょう。

2021年10月 1日 (金)

副業・兼業について(その2)

Q 副業・兼業を開始して、それぞれの会社で残業をした場合、割増賃金はどうなりますか?


A 所定労働時間の通算に加えて、自社と他社の所定外労働時間を、所定外労働が行われる順に通算して、法定労働時間を超える部分がある場合には、その部分が割増賃金の発生する時間外労働となります。(※所定労働時間は、労働契約を締結した順で通算します。)

(例)所定外労働時間の通算

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『副業・兼業の促進に関するガイドライン』より

労働時間の通算によって時間外労働となる部分のうち、自社で労働させた時間が自らの事業所の36協定の範囲を超えてはならず、その時間外労働時間に応じた割増賃金を支払う必要があります。

また、自社と他社の時間外労働の合計が、上限規制(時間外・休日労総時間が単月100時間未満、複数月平均80時間以内)の範囲内でなければいけません。

(例)A社:所定労働時間7時間、B社(後で契約):所定労働時間2時間の場合

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『労働関係法のポイント』より


flairポイント!

所定外労働時間の通算は、所定外労働が行われる順に計算し、法定労働時間を超えた場合にはその会社で割増賃金が発生します。また、それぞれの時間外労働は各事業所の36協定の範囲内でなければならず、それらの合計は上限規制の範囲内でなければいけません。


2021年8月30日 (月)

副業・兼業について(その1)

Q 先日入社した会社の就業規則を見せてもらったら、「副業・兼業をすることが出来る」と記載してありました。今後、副業をしたいと思った時はどうすれば良いですか?


A 副業・兼業を行う場合、労務提供上の支障や企業秘密の漏洩がないか、長時間労働を招くものとなっていないか等を確認するため、労働者からの事前の届出により各々の使用者と労働者の間で把握しておくことが望ましいとされています。まずは就業規則等を確認し、定められた方法に従い会社に届出をしましょう。

自分の就業時間(副業・兼業先を含めた)や健康状態を自己管理し過重労働にならないよう就業して下さい。


副業・兼業について、裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由とされており、副業・兼業を認める方向で検討することが適当とされています。

副業・兼業は、企業に雇用される形で行うもの、起業して事業主として行うもの、請負や委任といった形で行うものなど様々な形態があります。

副業・兼業先でも雇用されている場合には、労働時間を通算して管理(※)する必要が生じてくるため下記について各々の使用者と労働者の間で確認し合意しておくことが望ましいです。

  • 副業・兼業先の事業内容
  • 副業・兼業先で労働者が従事する業務内容
  • 副業・兼業先との労働契約の締結日、期間
  • 副業・兼業先での所定労働日、所定労働時間、始業・終業時間
  • 副業・兼業先での所定外労働の有無、見込み時間数、最大時間数
  • 副業・兼業先における実労働時間等の報告の手続き
  • これらの事項について確認を行う頻度

(※)労働基準法第38条で、「事業主が異なる場合においても労働時間に関する規定の適用については通算する」とされています。


(例)所定労働時間の通算
  労働契約を締結した順で通算し、法定時間外労働が発生した場合には割増が必要になります。

1_2
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」より


flairポイント!
副業・兼業をするにあたっては、労働者自身と両方の使用者が労働時間の管理や健康管理をする必要性が生じてきます。各々の使用者と労働者がコミュニケーションをとり過労によって健康を害していないか、業務に支障をきたしていないか確認をすることが望ましいです。